私たちがこの論文を書いたときには、ソフトウェア開発そのものを想定していなかった。しかし、これは、現在のソフトウェア開発におけるウォーターフォール開発とアジャイル開発のことではないか、と既視感を覚える構造だろう。そして、私たちはここでのType Cのようなチームを「スクラム」と名付け、チームの6つの特徴をあげた。

1.不安定な状態を保つ
2.プロジェクトチームは自ら組織化する
3.開発フェーズを重複させる
4.「マルチ学習」
5.柔らかなマネジメント
6.学びを組織で共有する

 これらは、アジャイル開発のスクラムにも、ほとんどそのまま引き継がれているアイディアである。
(引用終わり)

『アジャイル開発とスクラム 第2版』の発行記念として開かれたオンラインイベント「今こそ必要な実践知リーダーシップとスクラム」(2021年5月14日)では、同書の著者である一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏と永和システムマネジメント社長の平鍋健児氏による対談が行われた。

もう一度、日本の存在感を世界に発信してほしい

平鍋健児氏(以下敬称略) 2011年のイノベーションスプリントの開催以来、スクラムの導入は広がってきています。

野中郁次郎氏(同) イノベーションスプリントのことは、今もよく覚えています。会場で会ったサザーランド氏が「あなたが研究してきたことが非常に参考になっているんだ!」と涙ぐんでいました。「ソフトウェア開発は人間の生き方を問うている」と話していたことも印象に残っています。

 サザーランド氏がすごいのは、アジャイルスクラムを単なる手法にせず、どういった理由でその手法になったのか、しっかりとした理論を確立したことです。たとえば、スクラム型の開発手法のひとつである「ペアプログラミング」でなぜペアを組むのかについて、サザーランド氏は理論立てて説明しています。