日本企業の生き残りに必要な「MX」とは

DX・MXの船頭役を担う「経理財務」に必要なマインドセット

橋本 勝則(デュポン 前取締役副社長)/2021.4.6

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※本コンテンツは、2021年2月25日に開催されたJBpress主催「ファイナンス・イノベーション2021」の特別講演「日本企業が生き残る為のDXの本質は、Management Transformation(MX)」の内容を採録したものです。

東京都立大学大学院 経営研究科 特任教授
デュポン株式会社 前取締役副社長
橋本 勝則 氏

ミッション・ビジョン・コアバリューを再定義する

 こんにちは、東京都立大学大学院の橋本です。本日は「日本企業が生き残るためのDXの本質は、Management Transformation(MX)」というテーマでお話しします。前半では、日本企業が生き残るためのMXに必要なミッション・ビジョン・コアバリューとリスクマネジメント、オフィスワーカーの生産性と品質の向上について。後半は、経理財務や経営企画の方の役割についてです。

 DXの本質は「企業文化や固定観念を変革すること」にあり、今すぐデジタルに移行して企業文化を変革できないと敗者になる。経産省のレポートではそのように謳われています。この点について私は、経営企画・経理財務の方が活躍できるチャンスが来た、と捉えています。なぜならば、経営とITの仲を取り持つ存在が経営企画・経理財務だからです。

 今の時代、ミッション・ビジョン・コアバリューが非常に重要な位置づけになっています。今までの日本社会は「本音と建前」や「阿吽の呼吸」を使ってきましたが、これらは現在の多様化した社会では通用しません。

 ミッション・ビジョン・コアバリューを再定義し、社員一人ひとりの立ち振る舞いの矜持となるものをつくらなければなりません。また、これらは一度伝えて終わりではなく、根気よく伝えて浸透させる必要があります。

 例えば、デュポンのコアバリューは「安全と健康」「最高の倫理行動」「人の尊重」「地球環境の保護」の4つです。デュポンは1802年創立ですが、コアバリューは210年以上変わらず、絶対に守るべきものであり続けています。この4つの観点から見て何かおかしいと感じたら、社員一人ひとりが立ち止まって誰かと相談し、決して無理はしないこと。これが世界中のデュポン社員の価値観や行動基準になっています。

 続いて、リスクマネジメントについてです。デュポンでは「ビジネスリスク」「マーケットリスク」「クレジットリスク」「オペレーショナルリスク」の4つをリスク分類に位置づけ、これらのリスクマネジメントはコアバリューという土台の上で行っています。つまり、リスクマネジメントだけを用意しても、コアバリューという土台がぐらついていては機能しないということです。

 多くの日本企業がリスクマネジメントに取り組んでいますが、経験や感覚に頼った属人的、かつ網羅性に欠けるものだと感じます。組織の仕組みにリスクマネジメントを取り入れ、プランAがだめならプランB、そして最悪時のワーストケースシナリオを想定すること。絶えずこれらを考えていかないといけません。

 リスクマネジメントとはチェックリストや組織を作るということではなく、業務の中で普通にやっていることをトータルで管理し、大中小の組織レベルや個人レベルで考えたり、鳥瞰的に見たり、細かく見たりすることが必要です。