また、現場においても国内回帰や生産分担見直しが進んだ後、中国・アジア地域と比較しQCDSの圧倒的なレベルアップが必要であるが、日本の工場であれば、中国・アジア地域と比べ労働生産性が2~5倍というレベルは十分到達できると考える。必要な取り組みとしては大きくは以下である。

・製品設計も自動化容易性等見直しつつ、自動化の推進
・スマート化・デジタル化の推進により改善の質とスピードを向上
・設計・生産技術・製造などの部門横断の英知を結集した中身的改革・改善活動

 これらの改革・改善は部門を跨(またが)るのでトップ・幹部主導で行うことが望ましい。

 このような話をすると、設計・生産技術の連携が難しい、生産現場がデジタル活用するのは難しいなどの声が上がってくることが多いが、何かを変えることは当然パワーもいるし摩擦も発生する。その要因一つひとつを解決してくことが必要になる。すぐには大きな目標は達成しないが、ステップバイステップの目標と計画を立て、着実に行っていくことが重要と考える。例えば、デジタル化・スマート化であるが、人の育成とツール導入を行った著者の顧客では、品質・生産性などのデータ解析を最近のデータ解析ツールを用い、現場の製造部員が分析・対策を行っている会社もある。ステップバイステップであったが、このレベルが日本だとできるのである。

 このようなレベルアップも、知識習得し、知恵を出し、実行するのも「人」である。ツールを使いながらも、考え抜く力・改善する力がデジタル化で一層大切になると改めて思うところである。ダントツの工場になるためには、人そして人財育成は大変重要な要素と痛感する。

 これまで論じた国内回帰とものづくりのレベルアップを考えると、著者の経験から「円錐の理論」というものが見えてくる。円錐の頂点を国内工場のレベルとした場合、その高さが高いほど海外の工場のレベルも高いのである。このような「ものづくりのリーディング」を国内工場は行うべき役割があり、かつ、そのレベルでグローバルの水準も変わってくると考える。

 今回の新型コロナの環境下で、今一度、国内回帰や将来が明るい「ものづくりの戦略」と「ロードマップ」を見直す良いチャンスではなかろうか。

◎石田 秀夫
日本能率協会コンサルティング取締役
生産コンサルティング事業本部 本部長
デジタルイノベーション事業本部 副本部長
シニア・コンサルタント
 大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業戦略・商品戦略・技術戦略・知財戦略を組合せた「マネできない ものづくり戦略」を提唱し、次世代ものづくり/スマートファクトリー化推進のコンサルティングに従事している。