あらゆる産業分野にデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の波が押し寄せている。精力的に推進して順調に変貌を遂げている企業がある一方、危機感を覚えながらも足踏みしている企業もある。そんなDXの根幹ともいえるのが「データ活用」であり、その実現に必要なのが「データマネジメント」だ。企業はデータに対してどう向き合えばいいのか、そのためのデータマネジメントとはどのようなものなのか。データドリブン経営を説き、多くの企業のDXを支援してきたPwCコンサルティングの高橋功氏に聞いた。
以前とは異なる「データマネジメント」の中身
――様々な企業のDXを支援する中、成功できるかどうかはデータマネジメントにかかっていると主張されています。その理由はなんでしょうか。
高橋功氏(以下、高橋氏) まずデータマネジメントという言葉自体は、新しいものではありません。私たちが実施した「世界CEO意識調査」では、直近の2019年はもちろんのこと、約10年前の2009年においても、多くの経営者がデータマネジメントの重要性を認識しています。ただし、同じデータマネジメントでも、この10年間でその意味するところは大きく変わりました。
以前のデータマネジメントでは、「集めたデータをどう管理するか」が焦点でした。外に出すというよりは、社内できちんと管理しながら、自社製品の開発などに活用するという意識が強かったのです。
しかし現在は、データ活用を推進しようとすると、社内だけでなく外に対しても活用していくことになります。そうなると、一部の限られたデータマネジメント担当者だけでなく、企業全体でデータを活用するという文化を確立することが重要になります。
――「外に対してもデータを活用する」とは、具体的にどのようなことでしょうか。
高橋氏 典型的な例が、スマホのアプリでしょう。一般ユーザーにデータを入力してもらったり、ウェアラブルデバイス経由でヘルスケアデータを取得したりできます。それらのデータに自社ならではのデータを組み合わせて付加価値を出し、外部に提供します。
外から得たデータをきちんと管理して自分たちで活用することはもちろん、さらに外に向けたサービスにもつなげていくということが、DXの波で起こっていることです。そうなると、以前にも増してデータマネジメントが重要になります。
ユーザーのデータを慎重に管理しつつ、他のデータとの組み合わせなどによって価値を生み出す。その際に、何をどう出せば安全かなど、プライバシーの観点も考える必要があります。