CDO(Chief Digital Officer)の役割は、企業のデジタル化を推進するだけにはとどまらない。“デジタルトランスフォーメーション(DX)”として、会社全体を変えていくことが求められている。副社長CDOという立場で、自社変革に取り組んでいるのが、味の素の福士博司氏だ。味の素が目指すデジタルトランスフォーメーションとはどういうものかを、デジタル分野における経営陣コミュニティ「CDO Club Japan」の加茂純代表理事が聞いた。(JBpress)

――CDOに就任されたそうですが、それまで御社はデジタルトランスフォーメーションにどのように取り組まれていたのですか。

 今年(2019年)6月に、副社長兼CDOに就任しました。弊社でCDOの役職が設けられたのはこれが最初です。

 さまざまなところでデジタルディスラプションが激しくなっていますが、さいわいにして食品企業はまだそれほどの脅威にはさらされていません。しかし、食品企業にとっても消費者や流通の部分では明らかに変わってきています。今変わらないとエコシステムが維持できないどころか、そのうちディスラプターにやられてしまうかもしれないという危機感はありました。昨年の取締役会で、やはりこういう環境になったらきちんとCDOとデジタル変革の推進組織を持って、変革を加速すべきだということになって、それで私が最初のCDOになったのです。

目的達成のためにデジタルを活用する

 私の役割は、デジタルトランスフォーメーション、つまり自社変革です。変革には目的、大義が必要ですが、それを当社の「味の素シェアードバリュー(Ajinomoto Shared Value、ASV)」に置きました。ひと言で言うと「食と健康の課題解決企業」です。われわれは食品とアミノ酸の企業なので、その事業活動を通じて社会的課題を解決することに目標を置き、それを達成するために、デジタル技術を活用する、ということです。

――就任されてからどのようなことに取り組まれましたか。

 正式な人事は6月ですが、それ以前から準備を始めました。

 さまざまな情報を調べ、全部をまとめ直して、まず30ページ近いポリシーを作りました。私はそれ以前の10年間ぐらい、グローバル化に取り組んでいたのですが、そのときにも最初にポリシーを作ったのです。日本的組織はあうんの呼吸で動いてしまうところがありますが、グローバル化するときにはやはり記述的に仕事を進めなければいけません。見えないものがあってはいけないし、暗黙の了解では仕事が進まないので、今回も最初からポリシーを決めてやろうと。その準備に半年ぐらいかけました。