進化を続けるスマートホームの現状とは
ハードからソフトへ、モノ消費からコト消費へ。メーカーにとっても消費者にとっても、今や高品質な製品を販売・購入するだけの時代ではなくなっている。政府や自治体によるスマートシティ構想の発表をうけ、これまで自社単独で製品やサービスを提供していた家電メーカーや住宅メーカーが、他業種・他社と共創し、利用者視点に立った「暮らしのスマート化」を目指す動きが加速している。今回は「暮らしのスマート化」の一つとして、さまざまな業界・会社が相次いで参入、共創する「スマートホーム」の可能性や最新事情について見ていこう。
アップデートし続けるスマートデバイス
少子高齢化、都市への人口集中が進む日本では、官民連携で電力網や水道、行政サービス等ハードインフラの統合によるスマートシティが構想されてきた。そうしたスマートシティ構想では、エネルギーや生活インフラの管理にIoTを用いることで、生活の質の向上や都市の効率化を目指している。
昨今のスマートシティ構想は、これらハード面だけではなく、MaaS等のモビリティサービスのようなソフト面への展開を目指す動きが活発だ。その流れは住宅や家電業界も例外ではない。その一つとして、Amazon EchoやGoogle Home 等の対話型音声アシスタントが搭載されたスマートスピーカーがある。スマート家電やIoT機器との連携によって照明や家具、テレビといった家中の家電を音声で操作することが可能なスマートスピーカーは、「暮らしのスマート化」を急速に進めた。
IT専門調査会社のIDC Japanによると、スマートスピーカー等のスマートホームデバイスは2019年には世界全体で8億3270万台の出荷が見込まれており、世界市場の前年比としては26.9%成長するという。
最近では、音声の読み上げを待たずに素早くタッチ操作が可能なスマートディスプレイも登場している。日本では2017年にAmazon Echoの第二世代が上陸し、2019年の現在ではスマートスピーカーとしての機能に加えディスプレイを搭載したEcho Showが発売されている。
Google Homeも同様に、2017年に日本でスマートスピーカーとして登場してからさらなるアップデートを続け、いまでは7インチのタッチスクリーン画面を搭載し、日本の家電メーカーの多くがすでに連携している「Googleアシスタント」がメインで稼働する「Google Nest Hub」が発売されている。
動画や音楽の再生、インターネット検索からスケジュール管理まであらゆる機能が使えるGoogle Nest Hub(参照:Google Nest Hub公式サイトより)拡大画像表示
製品をつなぐスマートスピーカーから、サービスと連携するスマートデバイスへ
しかしこうしたスマートスピーカーは話題性が高いものの、実際に利用している人はどれくらいいるのだろうか。電通デジタルによる「スマートスピーカーの国内利用実態調査」によると、スマートスピーカーの認知率が約76%なのに対して、普及率は約6%だった。調査対象となった3/4の人がスマートスピーカーの名前を聞いたことがあっても、そのほとんどが実際に利用するまでには至っていないことが分かる。
スマートスピーカーの認知度 (参照:電通デジタルのプレスリリースより)拡大画像表示
スマートスピーカーの所有状況 (参照:電通デジタルのプレスリリースより)拡大画像表示
その理由として、「スマートスピーカーを使ってまで利用したいことがない」「どんなことができるのか分からない」「スマートフォン、PC、タブレット等があれば満足」「価格が高いから」などの理由が挙げられる。
スマートスピーカーを持っていない理由(参照:電通デジタルのプレスリリースより)拡大画像表示
このように「価格が高い」スマートスピーカーを使うことで「何ができるのか、何が便利になるのか」という認知度が低いため、所有するまでに至っていない。また、購入価格の面や音声認識の精度、設定の難易度等がスマートスピーカー導入への足枷になっているようだ。
スマートスピーカーにあったらいい機能(参照:電通デジタルのプレスリリースより)拡大画像表示
一方で、「スマートスピーカーにあったらいい機能」として、「自分の代わりに電話や訪問に応答してくれたり、子守や介護の補助・ペットの相手をしてくれる」機能や、「英会話やフィットネスなどのレッスンが受けられる」「日用品の不足をチェックしたり、日々の予定を教えてくれたり、暮らしのサポートをしてくれる」等、単に音楽やニュースを流す「製品」としての機能だけではなく、現在の生活をよりよくする「サービス」としての機能が求められていることがわかる。
こうした要望を実現するには「製品」を製造するだけではなく、「サービス」との連携が不可欠だ。さらにその「サービス」を生活者それぞれに合わせてパーソナライズすることで、より生活者の生活を快適にしていくだろう。
家電メーカーや住宅メーカーが提案するスマートホーム
そんな中、パナソニックが住宅を単なる「製品」ではなく、もう一人の家族として捉え、生活者に合わせた「サービス」まで提供する「HomeX」の提供を開始した。暮らしの統合プラットフォームとして提供されている「HomeX」は、「HomeX Display」と呼ばれるタッチスクリーン型ディスプレイを住宅内の生活ポイントとなる各壁に設置し、家電機器や照明等と連動して操作することが可能だ。そうして住む人の生活スタイルを学習したAIが、毎日のシーンに合わせた提案をしてくれるようになる。
例えば、キッチンでは家族の構成に合わせたレシピを提案したり、洗濯時には洗濯物の汚れ具合に応じて洗い方や洗剤の提案をしてくれる等、住宅が住む人に寄り添ってサービスを案内してくれるのが特徴だ。
デザインシンキングのプロセスサイクル(参照:Panasonic Homeの公式サイトより)拡大画像表示
また、シャープはAIoT家電*1や「COCORO+」アプリ等と連携し、利用者の生活習慣をAIが分析・学習して提案するサービス「COCORO HOME」の提供を開始した。AIとIoTをプラスすることで、対応家電を利用者の生活スタイルに合わせてパーソナライズする。
さらに、毎朝の行動をAIが学習して、家電の一括操作を提案してくれる。例えば仕事へ出かけるときに「テレビとエアコンのスイッチをOFFにして、照明を消して、ガレージのシャッターを閉める」といったような行動をとっていた場合、利用者の生活習慣を学習したAIが、ボタン1つで全てをOFFにできるよう提案。自宅へ帰ってくるときは、外から操作してエアコンだけをONにしておくことも可能だ。
さらにCOCORO HOMEのプラットフォームを開放することで、他社メーカーの機器やサービスと連携できるようになる。シャープは、2020年までに機器メーカーやサービス会社等合計でおよそ50社との協業を進めていくと発表した。名乗りを上げたのはセコム、KDDI、関西電力等。業種を超えてセキュリティー対策、通信、電気代に関連したスマートサービスの提供やスマホアプリでの一元管理等が期待できる。
例えば、現在でも「auでんき」のスマホアプリを使えば、1日あたりの電気使用量や電気代をチェックできるが、COCORO HOMEと連携し、より効率的な家電製品の使い方を提案してくれるようになれば、消費電力の削減も可能になるだろう。
*1 AIoT=「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」と「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」を組み合わせた、シャープの造語。
求められる共創
このようにモノ消費からコト消費へ消費動向が変化する昨今、高品質な製品やサービスを提供するだけではなく、生活者の視点に立ち、製品やサービス導入後の生活に関わっていくことが求められている。
それは何も1社だけで実現する必要はない。住宅と家電というハード×ハードの連携や、住宅とセキュリティ、住宅×ヘルスケアといったハード×ソフトの連携等、それぞれの会社が得意分野を活かし、横断的にサービスを連携・共創することで実現できる場合もある。
そうして一人ひとりの「暮らしのスマート化」が進み、やがて街や都市とつながり、都市全体で最適化するスマートシティ化が進めば、求められるサービスも変化してくるだろう。そのとき、業界や会社を超えて、利用者や都市のためにどれだけ柔軟性やスピード感を持って共創していけるかが成長の鍵となる。その点では、0から製品やサービスを生み出さなくても、掛け算の市場を開拓し、展開することができるスマートホームは、新規企業でも今からでも十分に参入できる余地がある分野だといえよう。





