知っておきたい「日本型」スマートシティの現在時刻

スマートシティ企画に聞く「人とテクノロジーをむすぶ街づくり」

佐々木正孝/2019.7.22

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スマートシティ企画 石垣祥次郎氏

 次世代の街づくりを目指すスマートシティ構想は、2000年代から急速に注目を集めている。国内外のスマートシティ事情に精通するスマートシティ企画の石垣祥次郎氏(以下、石垣氏)に、国内外での進む取り組みやその展望を聞いた。

時代とともに変遷するスマートシティ観。その最新潮流は?

 人口やエネルギー消費の爆発的な増加により、地球温暖化や都市部での人口急増など、都市を巡る喫緊の課題を克服すべく、スマートシティを目指す動きが活発だ。そもそも、スマートシティにはどのような定義があるのだろうか。

 スマートシティ企画 事業推進部 部長の石垣氏によると、スマートシティの定義にはこれまで3つの変遷があったという。まずは、スマートシティを巡る大きなトレンドラインを整理してみよう。

「現在につながるスマートシティ構想が勃興したのは2009年頃のことです。当時は地球環境を維持するための環境共生都市という位置づけが見られました。次世代電力網として導入が進められたスマートグリッドをはじめ、都市生活を支えるエネルギー消費を最適化するための仕組みが構想されていきました」

 電力網をはじめ、水道や通信、交通などの都市基盤、建物や行政サービスまで、すべてICTによって制御、統合する都市の姿が展望されていく。しかし、そのビジョンで存在感を示すのはハードとしての「インフラストラクチャー」だ。ハードの隙間を埋めるソフトの観点から、行政サービスや産業を活性化させようという動きが見られていった。

「2013年ごろには、前述の環境共生都市という構想に加えて、健康長寿、産業創造といったキーワードが出てきました。環境、エネルギー問題だけではなく、それ以外の領域もカバーする都市の構想です。ソフトの面からもQOL(Quality of Life)を上げる街への期待が集まりました」

 石垣氏が籍を置くスマートシティ企画は、2009年の始動時より「柏の葉スマートシティ」の開発プロジェクトに携わった。「環境共生」「産業創造」「健康長寿」という国家的な課題を解決すべくプロジェクトが進み、2013年に第一街区の街開きを果たしている。デジタルサイネージによる情報発信や、「HEMS」によって家庭単位で電力やガスなどのエネルギーを効率的に管理するシステム、活動量計などを通じて健康を可視化するサービスなどが企画された。これは環境、産業、健康に配慮して進められた、スマートシティの一つのかたちである。

 インフラからソフトという次元も加わり、よりリアルな像を結んでいくスマートシティ。そして次に焦点が絞られたのは「人」だ。生活者がより快適に暮らせる街を目指し、都市とライフスタイルに関わる提案が見られはじめる。こうして、人々がリアルに住まう、生活感あるスペースとしてのスマートシティ像が焦点を結んでいく。

「都市が掲げる大きな課題解決の目標は大所高所からのスローガンに過ぎないのでは、という提言があり、そこに住んでうれしいのは誰か?という視点が求められていきました。環境共生や健康長寿、産業創造というそれまでの志向だけではなく、人にとって魅力的な街であること、持続可能な街であることの2点が重要視されるようになりました。グローバルの流れでも、人とテクノロジーをつなぐ街が大きな定義として求められています。テクノロジーが人と人をつなぎ、生活者の視点で魅力的であり、持続可能な街が志向されているのです」

 ICTを活用し、ハードインフラとソフトインフラを有機的につなぐ。そして、効率的、一体的に制御、統合していく――新しく、それでいて生活者視点に立った利便性の高いスマートシティが姿を現し始めている。