大日本印刷は2019年7月、AI(人工知能)技術を利用して雑誌の誌面レイアウトを制作するシステムを開発した。写真や図などの画像データと本文のテキストデータを入力すると、AIがそれらを配置した100パターン以上の誌面レイアウトを自動生成し、それらを評価して、評価の高い5~10パターンを提案する。
最大の特徴は、建築雑誌のように写真や図を多く用いるグラフィカルな誌面レイアウトに応用できることである。写真や本文の配置がある程度決まっている誌面を想定したレイアウトシステムはすでにいくつも利用されているが、レイアウトの自由度が高い誌面を想定したものはまだ珍しい。
大日本印刷は建築雑誌を発行する新建築社とエー・アンド・ユーの2社と共同で、2018年1月からAI技術の研究開発を行ってきた。和英バイリンガルの建築雑誌「a+u」はページ内の余白を広くとったスタイリッシュなデザインで、横長の建築写真を2ページの見開きで配置するなどの特徴的なレイアウトも多い。1年あまりの期間をかけて同誌の過去15年分、約4000ページの誌面データを使い、“同誌らしい”レイアウトをAIに学習させて、「a+u」8月号から実際の誌面制作に取り入れた。
評価の着眼点をヒートマップで可視化
大日本印刷が開発したAI技術は主に二つの要素からなる。一つは、レイアウト生成用の機能だ。「本文のテキストや写真が誌面からはみ出さないようにする」、「テキストと写真が重ならないようにする」などあらかじめ設定した最低限のルールに則して複数のパターンのレイアウトを自動で生成する。
もう一つは、レイアウトの評価機能である。自動生成した100~1000パターンほどのレイアウトの画像を読み込み、写真やテキストが「その雑誌らしく」適切に配置されているかどうかを1000点満点で評価する。例えば、縦に並べて配置する2点の写真の左右端の位置がきっちりそろっていると高評価になる。反対に、写真の左右端がずれている、図の周辺の余白が大きすぎてページ全体のバランスが悪い、といった場合は評価が低くなる。