デジタルテクノロジーの普及により、自社の優位性や競争力を損ないかねない――。デジタルテクノロジーがビジネスに与える影響に、多くの国内企業が危機感を抱いている現状が調査によって浮かび上がってきた。
情報処理推進機構(IPA)はデジタルテクノロジーの活用によってビジネス変革を推進する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の現状や課題を把握する目的で、東証一部上場企業1000社を対象にアンケート調査を実施するとともに、10社には直接インタビューも行った。2019年4月に発表した調査結果によると、回答した92社のうち58.7%が、「デジタルテクノロジーの普及による自社への影響」として「自社の優位性や競争力の低下」を挙げた(図1)。
図1 デジタル技術の普及による自社への影響(出所:情報処理推進機構)
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調査の回答率は1割にも満たない。結果としてアンケートに答えることができたのは、DXにすでに取り組み始めたか、取り組みの必要性を強く認識している企業が中心だったものと考えられる。だが、それを含めて国内企業によるDXの動向を知る手掛かりになる。アンケートでは取り組み内容や成果の状況、組織体制など具体的な問いを設けたためである。
競争力を保てるのはせいぜい5年
AIやブロックチェーン技術を駆使したフィンテック、IoTを活用した不動産テックやアグリテックなど、さまざまな新サービスをいち早く生み出して実用化するスタートアップ企業が相次いで登場している。一方で大手企業のなかには、すでにスタートアップ企業が本格利用しているデジタルテクノロジーであっても、その有用性を「改めて」確認するPoC(概念検証)を実施する段階にとどまっているところが少なくない。こうした現状を東証一部上場企業が危惧する様子が、調査結果から垣間見える。