ベンダーロックインを回避できる?非エンジニアでも知っておきたい「コンテナ」とは
他社のリソースを活用して効率的にビジネスを加速させていく、という狙いはオープンイノベーションにも通ずる時流に合った考え方だ。
しかし、こと企業のIT部門においては「専門外だから」と特定のベンダーに依存しきってしまうケースも少なくない。クラウドサービスを巡る状況については先述の通りだが、システム開発の現場においても、同様の囲い込みが柔軟な経営判断を鈍らせてしまう恐れがある。
柔軟なシステム開発ができる環境は、多くの企業が対応を迫られるデジタルトランスフォーメーション(DX)においても非常に重要な要素といえる。これを実現するための手法として近年注目を集めているのが「コンテナ」だ。現在は主に開発環境向けに活用されている技術だが、「特定の環境に依存せず、業務(開発速度)を加速させていく」ための手段だと考えると、その概念は標準化・オープン化が進むこれからのビジネスを考える上で、広く参考にできるはずだ。今回は非エンジニア向けに、要点をかいつまんで解説する。
現在注目されている「コンテナ」技術とは、Linux(OSの一種)を論理的に分割して、1つのコンピュータ上に複数のOSが存在しているように見せるもの。実際に動作しているOSは1つだが、Linuxが持つ機能を使うことで、複数のOSが存在しているように見せることができるのだ。
マシンを分割して複数に見せるというと「仮想化」技術を想像する読者もいるかもしれないが、コンテナはいわゆる「仮想化」ではない。仮想化は基盤となるソフトウェア(ハイパーバイザ)をOSの代わりにインストールして、その上でゲストOSを複数動作させる技術。
一方、コンテナはOS(Linux)を論理的に分割して複数に見せるもので、階層(レイヤ)が一段上の技術となる。仮想化技術を用いる場合、さまざまなゲストOSを同時に動作させる状況が考えられるが、コンテナで使用するOSは基本的にLinuxのみ。そのぶん、処理に対する負荷は低く、同じハードウェアでもコンテナを用いる方がリソースを節約できるのだ。
コンテナはコンピュータにかける負荷が低いため、もともとサーバーが持っていたさまざまなサービスを細かく切り出すことが可能となる。例えば、「Docker」等のコンテナ管理ソフトウェアを用いることで、メール/ファイル/データベースサービスといった異なるサービスを動かすためのOSごと、細かく切り分けることができるのだ。
こうすることでシステムの見通しが良くなり、何か問題が発生した際も原因の洗い出しが容易となる。さらには、複数のOSを組み合わせて1つのサービスにまとめることもできるため、これらをテンプレートにすれば、新たなシステムを簡単に導入できるようになる。
また、同じコンテナ規格をサポートしていれば、クラウド/オンプレミス、あるいはテスト/本番環境を問わずにサービスを開発したり、稼動中のサービスを別の環境に移したりすることも容易だ。