HR Techの業界トレンド
さらなる労働力低下が避けられない今、いかに優秀な人材を獲得し、活躍させられるか否かが企業の命運を左右するといっても過言ではない。社内の従業員データを収集・分析することで人事の施策を最適化していく「ピープルアナリティクス」の取り組みが広がっており、人事部にデータサイエンティストを配置する企業も増えてきている。
では、HR Techの導入によって、具体的にどういったことが可能になるのだろうか? サービス事例と共に、業界のトレンドを一部紹介しよう。
●リファラル採用
在籍する社員やアルバイトに人材を紹介・推薦してもらうことで、より自社の社風に合った人物を選考・採用する方式。採用コストを削減できるだけでなく、この方式で採用された社員は入社後も定着・活躍しやすい傾向にあるため、多くの企業で取り入れられている。
一方で2017年10月17日にエン・ジャパンが発表した「リファラル(社員紹介)採用」に関する意識調査によれば、リファラル採用を実施したことがある企業のうち、同採用方式を制度化している企業は33%に留まるという事情も。ニーズの高い分野といえるだろう。
・Refcome
人事にも社員にも明快な紹介フローを構築。社員は、会社から送られてきた募集要項のURLをLINEやFacebook、メール等で紹介したい人物へ転送するだけ。システムへのログインやメールアドレスも不要という手軽さで、サイバーエージェントや三井不動産など、多くの大手企業に導入されている。データの可視化・分析も可能なため、効果的にリファラル採用を活性化させることができる。
●従業員エンゲージメント
所属する組織や事業、ミッションへの思い入れや愛着心、帰属意識のこと。福利厚生や社内の人間関係等を図る指標であり、「居心地の良さ」を示す「従業員満足度」と違い、従業員エンゲージメントの向上は企業の業績向上に直結する。
・wevox
組織の現状を可視化し、エンゲージメントにおける組織課題を特定。改善策を実施することで、組織改善のサイクルを生み出すサービス。組織の状態を定期的に確認することで、優秀な人材の離職を未然に防ぎ、マネジメントの質を改善する効果も。コロプラやGMOペパボ等で導入されている。
・Goodjob!
「ありがとう」や「いいね」といったポジティブな想いをポイントとして送りあえる、社内コミュニケーションツール。お互いの仕事を掲示板感覚で伝えることができるため、コミュニケーションを活性化させるだけでなく、社内でいま何が起きているのか、会社はどこへ向かっているのかを共有できる。SlackやChatWorkなど、既存のチャットツールと連携することも可能。管理者は各社員が送ったポイント数やもらったポイント数の統計を見ることができるため、そのデータから組織の現状を読み取ることができる仕組み。
●人材管理・配置
社内の人材が持つ能力や資質、経験値などを一元管理することで、より戦略的な人材評価や育成を可能にする「タレントマネジメント」の視点によって最適化が進む領域。
・カオナビ
社員の顔写真が並んだインターフェイスが特徴的な、クラウド人材管理ツール。顔写真をクリックすると、その社員のプロフィールや経歴、評価等の詳細が確認できる仕組み。ベーシックな「データベースプラン」のほか、評価ワークフローの紙やExcelでの煩雑な作業を効率化する「パフォーマンスプラン」、スキルや適正を可視化して自在に人事シミュレーションを行える「ストラテジープラン」まで、目的や予算に合わせて導入できる。導入実績は1000社を超え、デンソーやメルカリ、日清食品ホールディングス等多数の著名企業でも導入されている。
この他、採用や人脈構築に使える「Wantedly」のようなビジネスSNSや、「ジョブカン採用管理」に代表される採用管理システム、さらにはオンラインでビジネス知識や業務に必要な専門技術が学べる研修・学習サービスや、勤怠状況と併せて従業員の心身の健康を管理できるサービスから勤怠管理や給与計算などの労務を自動化できるサービスまで、HR Techがカバーする業務は広範にわたる。