流行に左右されるのが日本。その性質を逆手にとってイノベーションを実現する
ではPlug and Playが展開するアクセラレーションの中身はどうなのだろうか。アクセラレーターによっては、大企業とスタートアップ企業をマッチングする局面で1対1、すなわち特定企業同士を引き合わせ、ハンズオンで支援していくところもあれば、出会いのプラットフォームを用意して、1対多数、あるいは多数対多数でマッチングし、あえてハンズオフの姿勢を取っているところもある。
「その全部をやっているのがPlug and Playです。いろいろなシチュエーションで、いろいろなマッチングをやることで、うまくいく形を見つけ出そうとするんです。多数対多数のパターンは、Plug and Playのアクセラレーションプログラムで提供しますし、1対多数はディール・フロー・セッションと呼んでいるプログラムで提供します。そして1対1が最適だと判断した場合には、そうした支援も行っています。つまり、Plug and Playの手法はマルチだということです。あらゆるやり方を検討して、なんとか化学反応が起きるようにするのが目的です」
シリコンバレーでも、大部分のアクセラレーターは三つのパターンのいずれかに特化しているというが、そこは世界最大級のアクセラレーターであるPlug and Play。持ち前のネットワークと蓄積してきた豊富なノウハウを駆使しながら、マルチなアクセラレーションを展開できるというわけだ。そして、「だからこそ日本の役に立てる」とヴィンセント氏は言う。
「仮に、日本の大企業が過去にオープンイノベーションで失敗した経験を持っていたとしても、やり方はいろいろあります。Plug and Playが持っているものをどんどん試して欲しいですし、Plug and Play以外のアクセラレーター
を使ってもいいと思っています。自らVCファンドを立ててもいいし、とにかくあきらめることなく実行すれば、必ずその企業に適したコラボレーションのやり方が見つかるはずです」
最後にヴィンセント氏は面白い指摘をしてくれた。それは日本人のとある気質についてだ。
「以前から私が感じている日本人の特徴は、“はやりもの好き”な気質です。例えば今だったら『これからはAIだ』とか『スタートアップとのオープンイノベーションだ』とか、一度火が点くと、日本中がそのはやりに乗っかっていこうとしますよね(笑)。誤解しないでください、批判しているつもりはないんです。『流行しているからウチもやってみる』という姿勢でも全然構わないから、動き出したからには成功してほしいと思っているんです。Plug and Play Japanとしても、今こうしてスタートアップやオープンイノベーションが注目されているチャンスを存分に生かして成果を上げていきたいと考えています」
「一過性のバズワードに踊らされても成果なんて上がらない」などと、日本人の気質を自虐的に捉えて行動を手控えるよりも、とにかく可能性を感じるならばアクションを起こし、やるからには徹底的にチャレンジする、と考えた方がずっと前向きだ。むしろスタートアップ企業の価値観に近づいていくための近道ともいえる。
Plug and Play Japanは、スタート当初のFinTech、IoT、InsurTechの3テーマに加え、今年に入ってモビリティーも加わり、近々ブランド・アンド・リテールのテーマにも着手するという。また、名古屋や福岡などにホットな動きがあるといい、今後、東京以外に拠点を増やすプランも浮上しているようだ。イノベーション戦線で世界から出遅れていることは間違いない事実だが、確実に世界とつながるハブとしてPlug and Play Japanが動きを加速させている。「グローバルの壁」を越えるためのオープンイノベーション。その可能性も広がっている。