そして、具体的な成果として次のような数値を掲載している。

・2010年以来250社以上のスタートアップが創設された。そのうち36社は当校キャンパスに設立されている。
・2017年に18社のスタートアップがアクセラレーターを活用した。
・2017年に22社のスタートアップがインキュベーターを活用した。
・200人以上の雇用創造が生まれた。
・過去10年間で当校学生により創設されたスタートアップの評価額は2億5000万ユーロ(約325億円)にのぼる。
・2017年に当校のスタートアップは5700万ユーロ(約74億円)の資金調達をした。
・「club des industriels」に6社の企業がパートナーとして参加した。

 このような状況が、第9回で述べたフランスの“before”の状況から想像できるだろうか? エコール・ポリテクニークといえば、ジスカール・デスタンをはじめとして3人の大統領を輩出し、ノーベル賞受賞者、それに大銀行や大企業の幹部を約束されるエリート校の中のエリート校である。その学生たちが今やベンチャーに目を向け出したということである。そして既存の企業も「club des industriels」に参加することで、その後押しをしている。

 EDHEC(フランス北部のリール市にある経営学グランゼコール)については、2016年6月24日付の『Le Figaro Etudiant』紙の次のような報道があった。

 2016年5月に、経営学グランゼコール入学準備クラスの2930人の学生に「何を夢見るか?」とのアンケートを実施したところ、フランスの大企業でサラリーマンとして働くのではなく、国際的、もしくは人間的な規模の企業で起業家となることを夢見ているとの回答が目立った。具体的には、2014年のアンケートでは創業者もしくはフリーランスとなりたいという学生は22%に過ぎなかったが、今回の2016年調査ではそれが36%になった。アンケートを実施したNewGen Talent Centre de l’EDHECの先生は、「これは重要なことである。学生たちが夢見ているのは企業との間の無期雇用契約ではなくなっているということだ」と述べている。

 実際、EDHECに私からメールで質問表を投げてみると、「同校では既に2009年から起業家教育を始めており、今年は18カ国から78人の学生が「Entrepreneurship & Innovation」クラスに参加している。学習内容は国際水準に照らして最高のものである。4年生に特別コースがあるが、その学生の25%が起業している。また、フランスにおいては、高校段階での起業家教育も盛んになってきている」との回答が寄せられた。

 第9回の冒頭で示したGEM調査のフランスの企業活動率(TEA)が、ぐっと右にシフトしていくのも、そう遠くないのではないかと期待している。それに日本も取り残されてはならない。

 次回は、ヨーロッパ全体の起業家教育事情についてみてみたい。