世界中のCDO(Chief Digital Officer/最高デジタル責任者)を結び、交流の場を提供するネットワーク「CDO Club」。その日本における拠点である「CDO Club Japan」を立ち上げた加茂純代表に、CDOの役割・意義、日本における状況を聞くインタビューの模様をお届けしている。後編は、CDOに適した人物像、求められる資質からスタートする。
前回の記事(「デジタルの担い手『CDO』が企業の存亡を決する時代へ」)で、加茂氏はCDOが担うべき4つの具体的な役割を示してくれた。おかげで「デジタルに詳しければよい」というものではないことはよく分かったが、むしろ分ったからこそ、どんな人材が最適なのかが見えにくくなったような気もしてくる。
「非常に責任重大な意思決定も問われますから、もはやトップマターのようにも感じられるでしょうけれども、CEO(最高経営責任者)自らがデジタルに関わる分野までコミットするのは現実的には不可能です。先進国である米国でも、『CEOと同等の立場でものを言えるCDOがいて、両者が緊密に連携しながら動いていくしかない』と言われています。しかも、そのような体制をとったとしても、デジタルによるイノベーションの成功確率は3割程度だとさえ言われてもいるんです」
3割という数字を知って、ネガティブな印象を持った人もいるだろうが、そもそも「経営を根底から変革する」のがミッションなのだ。容易なチャレンジではないことをあらためて思い出すべき。既存コア事業の頭打ちが先々見えている数々の大企業にしてみれば、「成功確率が3割だろうと、やるしかない」のだ。そこで、加茂氏に再度尋ねてみた。いったいどんな人物がCDOの適任者たり得るのかを。
「私は最近、インテルの元CEOであるアンディ・グローブが成し遂げた実績と、それを可能にした発想や取り組みについての本を書きました。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクなど、革新的な偉業を成し遂げた起業家は日本でも英雄視されていますし、昨今では『優秀な若者ほど起業を志向する』という、素晴らしい傾向も目立ってきました。しかし、そんな今だからこそ“インテル中興の祖”アンディ・グローブの存在を日本で紹介したかったんです。ジョブズやマスクほど知名度はないかもしれませんが、彼はインテルという会社が苦境を迎える中で変革を起こし、繁栄を築いた人。既存事業の成長鈍化に危機感を募らせる大企業の人たちに、ぜひとも知って欲しいと思いました」