今後のビジネスで重要性を増すであろうAGI研究

 前項で述べたとおり、AGIの実現や社会実装にはまだ時間がかかるだろう。しかし研究は着実に前進している。AIの長い歴史の中で、ディープラーニング(深層学習)という新たな機械学習の手法が登場したことをはじめ、実際に様々な分野に特化したAIが生まれていることからもそれは明らかだろう。なぜなら、もともと特化型AIはAGIの実現を目指す過程で生まれてきたものだからだ。前述のAlphaGoを生んだDeepMindも、AGIの実現を目標に掲げている企業の1つに挙げられる。

 AGI開発を主目的に掲げている企業や団体として、代表的なものはDeepMind、OpenAI、GoodAIが挙げられるが、日本でもAGI研究を行う団体は存在する。

 有名なのはドワンゴ人工知能研究所所長の山川宏氏が代表を務める「全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)」だろう。脳の構造を参考にするという、方向性としてはDeepMindのものと近いアプローチ方法でAGIの実現を目指す他、コミュニティ形成や人材の育成といったAGIを「広める」活動も行っている。副代表はベストセラー『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』(KADOKAWA/中教出版、2015年)等で知られる東京大学大学院工学系研究科准教授の松尾豊氏であることからも、注目度の高い組織だ。

 他にも国内では、AIのオープンイノベーションコミュニティ「Team AI」を主催するジェニオが昨年8月に同コミュニティ内でAGI研究に特化したサブチーム「Team AGI」を立ち上げている。その研究成果として今年3月に「ヒューマノイド連動AGI」プロトタイプを発表した。プロトタイプということもあり、現状としては万能なAGIというわけではなさそうだが一定の成果は挙げている。今後こうしたオープンイノベーション的な取り組みによってAGIの実現を目指す団体は増えていくだろう。

 最後に、AGIが実現した際に期待される活躍シーンについて触れておきたい。例えば難病の治療法を見つけたり、社会問題や環境問題の解決に取り組んだり等、それこそあらゆる分野での活躍が期待される。しかし、ビジネスマンとして気になる「仕事を奪われる」という観点からすれば、いずれ経営社層もAGIに取って代わられるのではないかと予測できる。

 AGIなら、多分野にわたる膨大な情報郡の中から自社の発展に有益な情報を取捨選択し、活用できる。同じ時間にインプットできる情報量にしても、人間とは比べものにならないだろう。時としてすばやい判断が求められるビジネスにおいて、戦力アドバイザーとしてのAGIを獲得できるか否かは、今後の生き残りに関わってくるのではないだろうか。

 AGIは開発途上で現状公表されている情報は少ない。しかし随時関連ニュースは押さえておくべきだ。「今」、世間でAIと呼ばれているものにできることは何なのかを知り、AIやAGIを「使う側」に回るにはどうしたら良いか、常に考えておく必要がありそうだ。