のれんをくぐってお店に入って席に座る。

「マスター、いつものやつちょうだい!」

と注文すると、それ以上は何も言わずともお気に入りのメニューが提供される。

これは飲食店の常連になることで得られる楽しみの1つだ。店主の頭の中に嗜好が把握されているということは、たんに常連として認識されている以上の特別感も得られる。

お店側からしても、常連客に特別だと思ってもらえることがリピートしてもらうための大きなポイント。要するに、顧客とお店がWin-Winの関係にあるのだ。

港区芝大門にある「鶏ポタラーメン THANK(サンク)」では、こうした取り組みをAIで実現しようとしている。コミュニケーションロボットのSotaを店舗に設置。あらかじめ専用のアプリで顔写真を登録することでSotaが顔認識を行い、来店回数に応じてトッピングを無料提供する仕組みを作っている。

「鶏ポタラーメン THANK」の券売機

現時点ではAIによる恩恵が「ポイントカードの置き換え」までという状況ではあるが、ロボットによる接客事例はそこまで多くなく、エンターテインメント性に優れている。顔認識をして条件分岐をしサービスを変更できるロジックが整えば、常連客へのサービスは大きく前進するだろう。

クラウド型顔認識技術が顧客サービスを支える

Sotaに導入されている顔認識システムを開発したのがヘッドウォータース。ここでは人型ロボットの先駆け・Pepperをはじめとしたロボットへのアプリ提供を行っている。中でも「SynApps(シンアップス)」という顔認識ロボットアプリが核となり、ロボットとAIを組み合わせたサービスも多数展開しているのだ。


SynAppsを活用したサービス事例として、居酒屋の卓上にSotaを置いて飲み会の会話に参加する「飲みニケーションロボ」を開発したり、北海道発の人気ラーメンチェーン・山頭火のUniversity Village店(アメリカ・シアトル)でもSotaが顧客に合わせてメニューのレコメンドを行ったりするなど、エリア・言語を問わずプロジェクトが行なわれている。同社のロボットを活用した接客事例は今後ますます増えていきそうだ。