2017年6月7日(水)~9日(金)の3日間、幕張メッセの国際会議場において、デジタルメディア活用技術の総合イベント「Connected Media Tokyo 2017」が開催された。

9日に行われた基調講演では、総務省情報通信国際戦略局情報通信政策課課長 小笠原陽一氏が「データ主導社会の実現に向けて」と題した基調講演を行った。その講演の中で「IoT総合戦略」が語られたので紹介しよう。

IoT時代、インフラと制度の整備が大きな課題

インターネットが世に普及し始めてから約20年、これまで進化をし続けて人々から集まったデータはビッグデータへと成長した。これらを活用していく社会を総務省では「データ主導社会」と定義する。

IoTではあらゆるモノがインターネットに接続されることによって、従来では考えられない様々なことができるようになる。これまで個別だったデータ収集システム同士がつながることで、一見関係ないように見えるデータ同士を合わせた分析、新しいデータが見えてくるのだ。人による分析ではなく、AIを活用して、ひたすら分析を続けさせることもできる。現在、私たちを取り巻く環境は「データ主導」で変化を起こしている。これがデータ主導社会というわけだ。

このデータ主導社会を維持・管理・広げていくのが政府の仕事になる。

小笠原氏によると、今の政府が特に注力すべきことは、
1.インフラの整備
2.制度の準備
の2点だという。

総務省情報通信国際戦略局情報通信政策課課長小笠原陽一氏

1番目の「インフラの整備」とは、IoTを支えるネットワークインフラが安定的、かつ継続的に運用される環境を整えるということ。インフラが安定していなければ、モノ(各種機器)から様々なデータを収集すること自体が困難になる。

日本のインターネット回線は世界的に見ても高速だ。FTTHでは2Gbpsという高速サービスも登場しており、YouTubeやニコニコ動画などで2Kや4Kという高解像度でストリーミング配信を視聴することが一般的になってきた。しかし、8Kのストリーミング配信や、それ以上の負荷が掛かれば、現状でもインフラが需要に追い付かず、ネットワークが安定して使えなくなる。SDN/NFVを実装する前に、より帯域幅が取れ、高速なネットワークインフラの整備が急務とされている。

IoT総合基本戦略の基本的枠組み

2番目の「制度の準備」というのは、平たく言えば「流通」と「分析」である。多くの場合、データを集めるところと、データを分析するところは異なっている場合が多い。

たとえば、自社で医療・観光・自動車などからのデータを収集しても、それらを分析して、結果をフィードバックするのは別会社(第三者)であったりする。

本来、自社内で完結させることができれば、データの漏えいインシデントや個人情報保護などを、自社内で管理すればいい。法律等を考慮せず非常にシンプルに事が運ぶのだ。

しかし、「データは集めるが分析は他人任せ」という環境、これが拡大していくと企業データの保護、個人情報の管理といった、いわゆる面倒な法律に注意する必要が出てくる。そこで個人情報保護法との兼ね合いで、「どのように制度を整備していくのか?」が今、問われているのだという。

というのは、個人情報保護法では、「個人情報取り扱い事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」というのが、大原則であるからだ。

現在、データ収集に関しては、同意を得るダイアログが表示されるようになってきているが、不適切に収集されたデータをどうするのか? その際に参照される法律は? といったことが未整備のままである。