将来の社会像からありたい姿を描く

 外部環境変化を捉える際に、既存事業周辺の検討から出発すると、過去の延長線上の発想から抜け出せず、従来の戦略からの転換は図れない。

 そこで、改めて自社の存在理由である経営理念(自社のミッション)に立ち返り、世の中で達成が求められているSDGs(社会のミッション)との交点を起点に、将来的に自社が社会へ提供する価値(新たな事業の機会)を検討する。SDGsの17ゴールの観点を用いることで、既存の枠組みにとらわれない検討範囲、視点を広げた検討が可能となる。

 自社の将来ビジョンを検討する際には、自社に関わるステークホルダーに対して自社はどういう存在でありたいか、各ステークホルダーにどういう価値を提供することで存在意義を果たすことができるか、を検討する。

 重要なのは、独り善がりにならず、共感を呼ぶビジョンの設定である。これらを検討する上で参考になるのが、「Thought leadership(ソートリーダーシップ)」という考え方である。これは「主張や理念を掲げて社会や顧客から共感を得ること。顧客の基本的な価値観に合うプロダクトを世に出していく人・企業」を示しており、自社がこうありたいではなく、こういう社会を実現したい、という主張や理念を掲げることを指す。

 近年の事例では、自動車業界のテスラが、世界の化石燃料への依存に終止符を打ち、ゼロエミッション社会への移行を加速することで、より良い未来を実現することを公表している。またアップルは、2030年までに全ての製品をカーボンニュートラルにすることを宣言し、製品の100%リサイクルや製造に関わるサプライヤーまで含めて100%再生可能エネルギーによる電力に転換することを目指している。

 これら社会の課題解決をリードする先端の取り組みが、ユーザーの共感や応援につながり、熱狂的なファンの育成も相まって事業活動の成果にもつながっていく。