マスタークラスの様子。ソノマ・ヴァレーの多様性について。「ランドマーク・ヴィンヤード」にて
全米一のワイン産地、カリフォルニアをリードするソノマ・カウンティの基本
カリフォルニア州はアメリカのワイン生産量の約8割を担う一大産地。近年はオレゴン州やワシントン州のワインも注目されているが、ざっくり「アメリカのワイン」といえば、カリフォルニア州のワインと思っていいと言えるほどメジャーな産地である。アメリカ産ワインの国際市場での評価を決定付けたのがナパ・ヴァレーのカベルネソーヴィニヨン(「パリスの審判、スタッグスリープ、1973」で検索を)であったことから、クオリティの面でまずフォーカスされたのは濃厚なカベルネソーヴィニヨンだったが、その後、冷涼な産地のピノ・ノワールやシャルドネのニーズが高まるとともに、その主要産地であるソノマ・カウンティの注目度が高まっている。
ソノマ・カウンティを代表する生産者「キスラー・ヴィンヤーズ」のロシアン・リヴァー・ヴァレー ピノ・ノワール。初日のディナーで
初日のディナーで出迎えてくれたソムリエのクリスことクリストファー・ソウヤーが、全日程を通じて案内役を務めてくれた。
右がクリストファー・ソウヤー氏
サンタ・ローザ生まれ、カリフォルニア大学デービス校でワインを学び、「人生のほとんどをこの界隈で過ごした」と話す、ワイン産地ソノマ・カウンティの生き字引的存在。膨大な知識量に加え、アップビートなトークの熱量・情報量もすさまじく、アメリカのテレビで見るショープログラムのホストかスタンダップコメディアンを彷彿とさせる。ジェントルで生産者からの信頼も厚いクリスのおかげで、ソノマ・カウンティの旅は愉快かつ学び多いものになった。
初日のディナーの席でのクリスの概要説明は以下の通り。
ソノマ・カウンティの面積はナパ・ヴァレーを擁するナパ・カウンティの約2倍で、多数の小さな山脈を有する変化に富んだ地形が特徴。アペラシオンは独特の微気候(ミクロクリマ)の上に成り立っていて、直線的でシンプルな地形のナパ・ヴァレーより、ワインの多様性が自然に育まれる。「多くの小規模で個性的なぶどう畑を有する広大な産地という意味ではブルゴーニュに似ている」と言う。
ピノ・ノワールの畑。オクシデンタルの「センシーズ」にて
ワイン造りはテロワール重視の農家第一主義。最適なブドウ品種を理想的な場所に植えることに、地域を上げて取り組んできたのだという。それぞれの産地(テロワール)とヴィンテージごとに独特の条件を真に反映した、表現力豊かな少量生産ワインこそがソノマ・カウンティの神髄。毎年、同じ味を保つために化学的なアプローチに頼ることが多い大量生産品の対極にある。実際にこの地域は小規模なブティックワイナリーが主流で、全ワイナリーの約3分の2は生産量6,000ケース未満。ぶどう栽培農家とワインメーカーの間には深い尊重と緊密な協力関係が築かれていて、畑で培われたぶどうの個性が最終的にワインの味わいとして反映される。
アレクサンダー・ヴァレーで4代続く「アレクサンダー・ヴァレー・ヴィンヤーズ」。ぶどう畑とガーデンファームが連なる豊かな景色
地理的条件を背景としたワインのバラエティがあり、それを支えているのが土地の表現に重きを置いた農業第一の小規模生産者たち。「しっかり頭に入れておくように」と言われたが、翌日から始まった、マスタークラスセミナーとワイナリー訪問での1000本ノックのようなテイスティングは、まさにその2つの柱を確かめるものとなった。
