出所:共同通信イメージズ出所:共同通信イメージズ

 2025年11月、2026年3月期の連結最終利益が3期連続で過去最高となる見通しを発表したリクルートホールディングス。その中核事業会社であるリクルートは、営業組織と若手育成に強みを持つことで知られている。リクルートはいかにして営業に強い組織力と育成力を育んだのか――。2025年9月に著書『強くて元気な営業組織のつくりかた』を出版した、グロービス出版局長・グロービス経営大学院教授の嶋田毅氏に、リクルートから学ぶべき育成のポイント、複数社の「営業に強い組織」の分析から導かれた共通点について聞いた。

営業が強い企業の共通点は「生産性×働きがい×顧客満足」

――本書『強くて元気な営業組織のつくりかた 生産性・働きがい・顧客満足を高めるセールス・サクセス・チェーンの構築』では、営業現場を強化する方法論について解説しています。なぜこうしたテーマを選んだのでしょうか。

嶋田毅氏(以下敬称略) 本書はグロービス経営大学院の「研究プロジェクト」という科目が起点となっています。このプロジェクトでは、「営業力の強い企業の共通点」や「営業力の弱い企業との差異」などを探り、特に「営業力が強い」と考えた組織について、その共通点や独自の手法を深掘りし、分析しました。

 私自身もキャリアの中で営業職を経験していますが、営業は常に結果が求められる厳しい仕事です。成果としての数字を上げなければならないプレッシャーが強く、企業によっては怒号が飛び交うような環境もあります。その割に、日本企業の営業生産性は先進国と比べてもまだまだ低いと指摘されています。これが問題意識の出発点でした。

 営業が強ければ、会社に入るキャッシュは増大し、利益も増えます。全職種の中でも営業に携わる人は多いため、営業という職種の底上げは営業現場の人のためのみならず、日本経済のためにもなると考えました。しかしながら、昔ながらのノルマ主義でセールスパーソンが疲弊するような会社はあまり良くないとも考えていました。

 そこで、本書の重要なキーワードの一つに「働きがい」を選びました。会社に言われるがままに数字を追いかけて疲弊するのではなく、科学的な知見を取り入れながら、内発的動機と働きがいを持って営業活動に取り組むことが、お客さまにも喜んでいただくことにつながります。そのような組織をより多くつくるヒントを届けたい、ということが「営業組織」をテーマに選んだきっかけです。