マーケットなくしてアート産業なし。「新興市場」の京都は個性で勝負する

京都は文化都市だと誇るが、実際、そのイメージを作っているのは、過去数百年の文化遺産の保存活用だ。寺社仏閣も工芸品も、歴史上の権力者の浮世離れした財力が生んだ。現代に文化都市構想を描くなら、必要なのは強いアート産業と市場だろう。それも、浮世離れした規模の。世界のアートマーケット年間売り上げは約575億ドル(2024年 The Art Basel and UBS Global Art Market Report)。京都はここにどう食い込んでゆくのか。

アクションを起こしたのは、京都府だった。2021年に府が立ち上げたアートフェア「Art Collaboration Kyoto(ACK)」は国内のギャラリーが海外のギャラリーとコラボで出展するという個性的なスタイルだ。2024年の推計売上は約4億円と小規模ながら(アートフェア東京の同年推計売上は32億8千万円)、来場者23,100人の67%が20〜40代と、観客は若い。

「Art Collaboration Kyoto(ACK)」は、2025年11月14〜16日 フェア会場の国立京都国際会館のほか、社寺などを会場とした連携イベントで京都らしさを出す。今年は72ギャラリーが参加。写真は2024年 ACK会場風景(Courtesy of ACK, photo by Moriya Yuki)  
https://a-c-k.jp/

「京都アート月間」で京都市と京都府が初めてアートで手を組む11月

ACKが5年目を迎えて定着し、同時期に京都にアートイベントが集中する流れができた。今年は名刹、名勝を会場にした「CURATION⇄FAIR Kyoto」も登場する。和の観光要素のあるアートフェアは京都ならではだ。 

「CURATION⇄FAIR Kyoto」は2025年11月15日〜18日。本会場は西陣の大本山妙顕寺。併設展覧会は名勝 渉成園で開催。工芸と近代洋画に焦点を当てた内容
https://curation-fair.com

今年、京都府と京都市は、市内で開催されるアートイベントを「京都アート月間」として合同で発信。市と府がアートで連携するのは、今までになかった動きだ。これが「アートの街・京都」への本気の証だといいが。 

京都市と京都府が関わる秋の京都のアートイベント、周遊イベントをまとめて一括検索。ACKは他のイベント会場を結ぶシャトルバスや割引チケットもあり、回遊しやすい
https://kyoto-art-month.jp

「京都は歴史と伝統がある。だから100年スパンで物事を考えられる」と、地元の文化人は、よく口にする。令和の現代アートは100年後、誇れる文化になっているだろうか。京都は文化都市なのか、文化遺産都市なのか。そろそろ京都の覚悟が見たい。