出所:共同通信イメージズ
産業用ロボット向け精密減速機で世界シェア首位のナブテスコ。目白大学経営学部准教授の高辻成彦氏によると、同社は「代表取締役が2人いる時期をあえて設けている」という。そこにはどのような狙いがあるのか。2025年6月に著書『資本コストや株価を意識したコーポレートガバナンス』(日本能率協会マネジメントセンター)を出版した高辻氏に、資本コスト経営を企業の成長に生かすアプローチ、ナブテスコが取り組む企業価値の向上策について聞いた。
「ニッチ市場での首位ポジション」で成長ストーリーを構築
──著書『資本コストや株価を意識したコーポレートガバナンス』では、企業価値を向上させるためのアプローチとして「6G」のフレーム(成長力、俯瞰力、開示力、共感力、持続力、改善力)を提示しています。その1つである「成長力」の事例として機械メーカーの日進工具を挙げていますが、同社はどのような取り組みを進めているのでしょうか。
高辻成彦氏(以下敬称略) 日進工具は、機械工具の一種である超硬小径エンドミル(切削工具)を製造している会社で、この分野では国内首位のメーカーです。ここで重要なのは、機械工具業界全体を見れば、総合首位の上場企業が存在するということです。
企業規模で比較すれば、日進工具の方が総合首位企業よりも小さい会社です。しかし、同社は、市場の位置付けを再定義したことで、独自の成長ストーリーを見出しました。「機械工具」全体の市場でみるのではなく、「超硬小径エンドミル」というニッチな得意分野の市場に焦点を当て、そこでは国内首位であることをアピールしたのです。
これにより、「超硬小径エンドミル」という精密加工分野においては国内首位プレーヤーであり、独自成長を遂げているというアピールが可能になりました。精密加工分野では、EV(電気自動車)やスマートフォン、5G基地局といった成長産業と密接に関わっており、産業構造の転換を受けて業績拡大が図れるという独自の成長ストーリーを描いています。
決算説明資料を見ても、総合首位企業との比較はしていません。「我々はニッチな分野で戦っています」という独自路線を明確に示すことは、競争優位性を示す上で効果的な説明手法であり、投資家から一時期、注目を集めました。
同時に、企業価値向上のみならず、社員のモチベーション向上にも寄与し、自信と誇りをもたらしたことも重要なポイントです。







