2025年5月、埼玉県の川口駅前にオープンした「ららテラス川口」写真提供:yoshi0511/Shutterstock.com
ショッピングセンター(SC)業界が転換期を迎えている。2025年上半期は既存施設の売り上げがコロナ禍前を上回る一方、新規開業数は10件と過去5年で最少にとどまった。インバウンド需要の回復が追い風となる中、人口減少や建設費高騰が開発を難しくしている。SC業界が直面する構造変化と今後の課題について、流通科学大学商学部教授の白鳥和生氏が読みとく。
売上高はコロナ禍前の水準に回復、インバウンド需要がけん引
2025年上半期(1~6月)、全国のショッピングセンター(SC)業界では、既存施設の売り上げが伸びる一方で、新規開業数は大幅に減少するという対照的な動きが見られた。日本SC協会によると、既存施設の売上高がコロナ禍前の水準に回帰。インバウンド需要や嗜好品消費の活況が追い風となり、大都市を中心に来館者数が増加した。一方で、新規開業数は過去5年間で最少の10施設にとどまり、建設費高騰や人口減少を背景に開発の難しさが際立った。
日本SC協会の菰田正信会長(三井不動産会長)は「改めて内需を支える大きな役割、地域のインフラとして重要性が高まっている」と話しており、「多発する災害や環境問題への対応もSCに求められる重要な課題」との認識を示す。
既存SCの売り上げが好調な要因は主に2つある。
第一に、訪日観光客の消費拡大だ。特に大都市や観光地立地のSCでは、インバウンドの購買が顕著に増加。大阪の「ルクア大阪」では、前年度比17.5%増の1037億円と過去最高を記録し、免税売上高が135億円(前年度比102%増)と全体を押し上げた。
第二に、国内需要の変化である。推し活やライブ観戦といったコト消費、嗜好品やファッションへの支出が活発化。2025年6月には観測史上最高の高気温が夏物商材の販売を押し上げた。加えて、テナントの入れ替えやリニューアルといった販促施策が来館意欲を高めた。






