古河電気工業 代表取締役兼執行役員専務 戦略本部長の宮本聡氏(撮影:榊水麗)

 古河電気工業(以下、古河電工)代表取締役兼執行役員専務の宮本聡氏は、本社戦略本部のトップも兼任する。不透明さを増す国際情勢やサステナブル経営の要請の中で、同社はどのような戦略を描いているのか。中長期における成長の鍵を握る、新規事業創出やデータセンター分野、エネルギー分野の取り組みを聞いた。

関税の影響は価格転嫁とサプライチェーン再編で対応

――技術や社会の変化に加え、米国関税措置や地政学的問題など、外部環境のリスクが顕在化しています。戦略立案と実行時に、どうやって対処していますか。

宮本聡氏(以下、敬称略) 米国関税措置に限ったことではありませんが、まずは、広く地政学的リスクに対応するため、情報収集の態勢を強化し分析を行っています。

 当社の米国関税措置への対応は、関税によるコストアップを価格転嫁で吸収することが基本です。その他、一部部材の調達先変更などサプライチェーンの見直しでコストアップを抑制しています。もちろん、価格改定はお客さまとの交渉になりますから楽観はできませんが、丁寧に説明を重ねています。

 短期的に米国内での生産にすぐさま移行することは考えていませんが、柔軟な生産体制の構築や部材調達先の複線化、現地パートナー企業との関係強化は進めております。通常この検討はサプライチェーンを担当する部門が中心となって進めますが、検討範囲が拡大して全社に影響が及ぶ場合は、戦略本部も関与します。

 ここで強調したいのは、価格転嫁が可能なのは「お客さまに選ばれる製品」を提供できているからこそ、という点です。