古河電気工業 代表取締役兼執行役員専務 戦略本部長の宮本聡氏(撮影:榊水麗)

「ケーブル御三家」の一社として長年光ファイバー、電力ケーブルの製造を手掛けてきた古河電気工業(以下、古河電工)は、2030年に向けた経営ビジョン(「古河電工グループ ビジョン2030」)を策定し、情報通信、エネルギー分野等で攻めの姿勢を示している。戦略本部長を務める代表取締役専務の宮本聡氏が語ったのは、事業戦略遂行のための戦略本部の役割、そして事業部門にも戦略機能を持たせる必要性だった。

事業ポートフォリオ再編と付加価値最大化の成果

――現中期経営計画は2025年度が最終年度です。ここまでの進捗をどう評価していますか。

宮本聡氏(以下、敬称略) 現中計は、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」「開発力・提案力の強化による新規事業創出に向けた基盤整備」「ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の基盤強化」という3つの柱で取り組んでいます。

 特に1つ目の既存事業の収益力強化では初めての試みとして、「事業ポートフォリオ検討委員会」を設けて、事業を成長性や収益性などの軸で分類し、投資の傾斜配分を実行してきました。

 その結果、成長性・収益向上が見込める事業には優先的に投資を行う(投下資本を配分する)ことで付加価値の最大化を図り、逆に成長や収益改善が見込めない事業は再編を行ってきました。

 この取り組みの成果は数多く上がっています。例えば、当社グループ内に散在していたメタル電線の事業を、「古河電工メタルケーブル」として統合・再編しました。また光ファイバー・ケーブル事業も、日本、北米、南米に分かれていた拠点を統合し、グローバルで最適なサプライチェーン構築、意志決定の迅速化を目指して合同会社を設立。「Lightera(ライテラ)」というブランドでスタートを切りました。

 次の成長領域への取り組みも、現中計にとどまらず、2030年、さらにはその先を見据え、有望な事業戦略の解像度を高める活動を進めています。