2023年8月9日、500万台目の新エネ車をラインオフさせたBYDについて語る王伝福董事長(出所:新華社/共同通信イメージズ)

 ラインナップ、販売台数ともに拡大を続け、今や欧米、日本の歴史ある自動車メーカーと肩を並べる存在となったBYD。企業としての特色、本当の強みは何か? 死角はないのか? 世界初の量産型電気自動車「i-MiEV」(アイ・ミーブ)の開発責任者・和田憲一郎氏が分析し、日本の自動車メーカーが今後取るべき戦略を提案する。

2025年も成長するBYD

 今回は、中国の自動車メーカーBYDについて取り上げてみたい。BYDは、2025年上半期(1月~6月)の決算において、売上高が前年同期比23%増の3713億元(約7兆7000億円)に達し、純利益も14%増の約155億元(約3200億円)を記録した。新車販売台数は、バッテリー電気自動車(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)を合わせて、前年同期比33%増の214万6000台。これは、ホンダ、スズキ、日産自動車を抜き、世界第7位に位置する。

 一方、中国国内市場においては、自ら発案した「振り落とし戦略」を展開した結果、いわゆる「内巻」と呼ばれる過度な価格競争を誘発した。この戦略の影響により、国内販売の成長は次第に鈍化しつつあり、9月には2025年の販売目標を当初の550万台から460万台へと下方修正。2024年の販売実績は427万台であり、修正後の目標は前年同期比約8%増にとどまる水準である。

 とはいえ、堅調な業績を維持しているBYD。果たして死角はあるのか。企業経営の面から課題を考えるとともに、それに対する日本企業の打ち手について、筆者の考えを述べてみたい。