日本低軌道社中のプレスリリースにて公開された「日本モジュール」と「商用物資補給船」のイメージイラストⒸ日本低軌道社中
民間企業によるロケット開発、人工衛星を利用した通信サービス、宇宙旅行など、大企業からベンチャー企業まで、世界のさまざまな企業が競争を繰り広げる宇宙産業。2040年には世界の市場規模が1兆ドルを超えるという予測もあり、成長期待がますます高まっている。本連載では、宇宙関連の著書が多数ある著述家、編集者の鈴木喜生氏が、今注目すべき世界の宇宙ビジネスの動向をタイムリーに解説する。
三井物産の子会社・日本低軌道社中が、日本初の民間実験モジュールと補給船の開発に着手した。国家支援を背に、日本の宇宙事業が存在感を示す一歩となるのか?
三井物産の宇宙機
2025年7月28日、三井物産の100%子会社である日本低軌道社中(東京都中央区)が、2機の宇宙機の開発に着手することを発表した。1機は、アメリカの民間宇宙ステーションに接続する「日本モジュール」。もう1機は、そこに物資を輸送する無人の「商用物資補給船」だ。現時点では接続する民間宇宙ステーションは未定だ。
老朽化が進むISS(国際宇宙ステーション)は2031年の廃棄が予定され、その際、ISSに接続している日本の実験モジュール「きぼう」も太平洋に沈む。そのため日本低軌道社中は、きぼうの後継機となる日本モジュールを民間企業として日本で初めて保有・運用することで、低軌道(高度2000km以下の地球周回軌道)における日本独自の研究の場を確保し、その機会を顧客に提供しようとしている。
今回の発表は、同社の提案がJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙戦略基金に採択されたことを受けて行われた。同基金では、担当省庁から技術開発テーマが提示され、民間企業や大学が応募入札する形で競われるが、支援金の総額は10年間で最大1兆円。その中で、日本低軌道社中は第一期の募集において2つのテーマで採択され、最大225億円の支援を受けることになった。





