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優れた人材の確保、活用がますます企業の競争力を左右する時代になってきた。それに伴い、人事領域をつかさどる人間が経営に参画することの必要性が高まっている。人事戦略と経営戦略はどのようにリンクさせ一体化させるべきなのか? ヤフーで人事部門のトップを務め、現在は企業の人材育成や1on1 ミーティングの導入指導に携わるパーソル総合研究所取締役会長の本間浩輔氏が、「経営人事」を深掘りしていく。
今回は、M&A後に必ず直面するPMI(合併後の統合プロセス)について。異なる歴史や文化を持つ企業同士が統合すれば、制度やシステム、オペレーションなどさまざまなレベルで統合作業が発生する。これはかなりの困難を伴うプロセスだが、この部分にM&A前に思いをはせる経営者はほとんどいない。ヤフーとLINEの経営統合では何が起きたのか。LINEヤフーの人事総務統括本部ピープル&カルチャーデベロップメント本部の本部長を務める中村有沙さん(肩書きは2025年3月当時)に振り返ってもらった。
PMIは人事のど真ん中
皆さん、こんにちは。本間浩輔です。この連載では、「経営人事の仕事論」というテーマで「経営人事」について深掘りしていますので、お付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。
前回に引き続き、今回もLINEヤフーの人事総務統括本部ピープル&カルチャーデベロップメント本部の本部長を務める中村有沙さんの話をフックに、経営人事について考えていきたいと思います。彼女には僕が講師を務める慶應丸の内シティキャンパス(慶應MCC)の講座「経営人事の仕事論」でお話しいただきました。
前回はHRBP(HRビジネスパートナー)のメリット・デメリットについてお話ししましたので、今回はPMIについて深掘りしていきます。
PMIとは、Post Merger Integrationの略で、M&A後の統合プロセスのことを意味します。この連載でも何度かお話していますが、成長のため、あるいは人材獲得のためにM&Aは必須の経営課題になっています。
最近では、M&AとPMIはペアで語られることが一般的になってきました。すなわち、企業を統合する場合には、統合後のことも考えておこうという当たり前の話です。ただ、この当たり前の話がとても難しい。統合してから苦労して、「前から準備しておけばよかった」と後悔する事例は決して珍しくありません。
そして、PMIは人事のど真ん中の話です。異なる企業が統合すれば、組織文化の融合から人事制度の統合まで、人事は間違いなく混乱の渦中に放り込まれます。この戦時のような混乱を乗り切り、M&Aを成功させるために、CHRO(最高人事責任者)として対応しなければならないことは山のように出てくるでしょう。
中村さんは、ヤフーからの人事本部長の一人として、ヤフーとLINEのPMIを経験しました。今も、人材開発・採用の責任者としてPMIを進めています。今回は、ヤフーとLINEの経営統合を巡り、中村さんが何に直面したのかという点について、議論を深めていきたいと思います。






