ジャガー・ルクルトが発表した新たな「ポラリス・クロノグラフ」は、1960年代のダイビングウォッチへのオマージュとして誕生したコレクションに、シグネチャーカラーであるオーシャングレーの新ダイヤルを採用したモデルだ。その最大の特徴は、35層のラッカー塗装と3種類の仕上げを組み合わせた奥行きのあるダイヤルである。42mmのステンレススチール製ケースには自社製キャリバー761を搭載し、ヴィンテージ感溢れる魅力と現代的な実用性を両立させた一本となっている。

かつてない奥行き感を手に入れたオーシャングレーの新ダイヤル

近年のヴィンテージダイバーズブームは、単なる復刻を超えた領域に達している。特に1950年代から60年代にかけて誕生したダイバーズ仕様の時計が持つ、力強くも洗練されたデザインに対する再評価は、現代の時計愛好家たちの間で高まる一方だ。そうした潮流の中で、ジャガー・ルクルトが新たに発表した『ポラリス・クロノグラフ』は、まさに時代の要請に応える一本として注目に値する。

今回発表されたモデルの最大の特徴は、シグネチャーカラーであるオーシャングレーのラッカーを施した新ダイアルにある。この文字盤は、ジャガー・ルクルトの時計製造技術の粋を集めた“芸術品”だ。35層という驚異的な回数までラッカーを塗り重ね、3種類の異なる仕上げを巧みに組み合わせることで、光の角度によって表情を変える奥行きのあるルックスを実現している。

その製造工程は、まさに職人技の極致である。最初に透明のニスを塗布し、その後にカラーを4層塗り重ね、さらにブラックの層でグラデーションを作り出す。最も困難とされるのは、センターディスクとアワーリングで、シェイド(色合い)とグラデーションの両方を完璧にコントロールすることだ。加えて、半透明のラッカーを30回塗り重ねて、色彩に深みと豊かな光沢をもたらしている。

文字盤中央、時分表示のあるアワーリング、タキメーターのあるアウターリングの3ゾーンで、表面加工の違いを作り出している。手の込んだ造りが素晴らしい

センターディスクのサンレイ仕上げが、アワーリングの滑らかな光沢と絶妙なコントラストを形成。明るい色から暗い色へと段階的に変化するグラデーションが、まるで海の深さを表現するかのような視覚的奥行きを創造している。鮮やかなオレンジのアクセントはスポーティな個性を強調し、全体の印象をダイナミックなものとしている点も見逃せない。

最新技術によってもたらされる外装、ムーブメント

実用性を追求して外装パーツは改良されているが、ヴィンテージテイストは損なわれていない

42mmのステンレススチールケースは、現代的な着用感を重視した設計である。すっきりとした直線とシャープな曲線を描くラグ、スリムなベゼル、そしてサテン仕上げとポリッシュ仕上げの巧妙な組み合わせは、ポラリス シリーズの主要なデザインコードを体現したものだ。1960年代モデルの象徴であった大型のリューズと頑丈なプッシュボタンは、現代の使い勝手を考慮してより掴みやすく改良されており、過去から現在へと引き継がれる技術的進歩を物語っている。

サファイアクリスタルのケースバックを通して見える自動巻きムーブメント、キャリバー761は、ジャガー・ルクルトの時計製造哲学を象徴する存在である。ダブルバレルを備えた完全一体型クロノグラフ ムーブメントは、垂直クラッチを採用したコラムホイール・クロノグラフ機構を備え、65時間という実用的なパワーリザーブを実現している。

ケースバックはシースルー。ムーブメントの美しさを存分に堪能できる

そのムーブメントの装飾にも、ジャガー・ルクルトの美意識が反映されている。ブルースクリュー、ベースプレートのコート・ド・ジュネーブ装飾、そして「JL」のモチーフをあしらったシグネチャーのオープンワークローターなど、繊細な仕上げが随所に施されている。これらすべてが、スイスのジュウ渓谷にあるマニュファクチュールで設計、製造、組み立てられていることも、この時計の価値を高める要素である。

1833年の創業以来、1400個を超えるキャリバー開発と430以上の特許を通して革新を続けてきたジャガー・ルクルト。“ウォッチメーカーの中のウォッチメーカー”として知られるマニュファクチュールが放つこの新作は、過去への敬意と現代の挑戦を見事に調和させた、まさにダイバーズウォッチの最前線なのである。

ポラリス・クロノグラフ Ref.Q9028651、自動巻クロノグラフ(Cal.761)、ステンレススチールケース(径42mm、厚さ13.39mm)、ブラックラバーストラップ(交換用ブルーグレーのキャンバスストラップが別途付属)、10気圧防水、233万2000円(税込)