
ウブロは2004年に「The Art of Fusion(異なる素材やアイデアの融合)」をコンセプトとして打ち出してから、革新的な素材や新技法を次々に開発し、毎年のように時計業界や時計ファンを驚かせてきた。その探究心はさらに深まり、20年の歳月が経過した今日も、その研究開発はさらに高度化して、より独自性の高い素材やアイディアの商品を生み出している。ここでは、多くの独自素材を持つウブロにあって、現在もっともホットな3つの素材について語っていきたい。
ウブロだけが開発できる唯一のゴールド
まずは「マジックゴールド」。これは現在ウブロだけが開発できる唯一のゴールド素材である。それは従来の18Kゴールドの数倍の硬さを持ち、退色しないゴールド素材として注目されている。
通常使われている18Kゴールドは、75%の純金に他の素材を25%分混ぜて溶解することでつくられる。つまり純金(24K)だと軟らかすぎて時計のケースとしては成立しないので、25%の異素材を加えることで硬度を担保しているわけだ。
一方、18Kマジックゴールドは骨格がセラミックである。ウブロのセラミックは原料によってさまざまな種類が存在するセラミックの中でも、炭化ホウ素を原料にした特に硬い高品質なものを採用している。この炭化ホウ素セラミックは戦車の装甲や防弾チョッキなどの軍需産業や航空・宇宙産業で用いられているという、それだけで高硬度なのがよくわかるだろう。
その工程は、まず内部に無数の気孔がある多孔質のセラミックをつくることからはじまる。炭化ホウ素セラミックの骨格が出来上がると、その無数の孔に、高温高圧(200気圧)の不活性ガス(アルゴンガス)で融解したゴールドの液体を圧入する。すると、セラミックとゴールドが融合した新素材「18Kマジックゴールド」が誕生するのだ。
色味はゴールドではあるが、独特の雰囲気を持っていて一言では言い表せない。ブロンズ的ではあるが少し違うし、光の加減で全然色が違って見えるのも楽しい。独特の手法でつくられ『ビッグ・バン 20th アニバーサリー フルマジックゴールド』に採用されたマジックゴールドは、使えば使うほど魅力的な味が出てくるに違いない、と確信する。
ちなみに、硬さを表す尺度にピッカー硬度というものがある。それによると、18Kゴールドが140HV、腕時計によく使われるステンレススティールが200HVとなる。そして、このマジックゴールドは約1000HVということなので、いかに硬いかがよくわかるし、それが“ほぼキズがつかないゴールド”と言われる所以となっている。
ビッグ・バン 20th アニバーサリー フルマジックゴールド自動巻き(Cal.HUB1280 ウニコ)、18Kマジックゴールドケース、43㎜径、100m防水
556万6000円(世界限定100本)
ウブロ独特のダイレクトな色味
ウブロといえばセラミックも長年研究開発しており、一日の長がある素材である。とくに今年発表された最新素材で、数年の歳月を費やして完成させたマルチカラーセラミック、「マジックセラミック」が秀逸だ。このダイレクトな色味はウブロ独特のものである。
どこも真似のできないこのマジックセラミックは、見ただけでも高難度な工程が必要とされることが容易にわかる。
セラミックは通常、単色での成形が常識だったが、ウブロは長年の研究開発により加熱時の反応を制御することで、多色表現を可能にした初の技術を完成させたのだ。
ブランドのR&Dディレクターのマティアス・ビュッテ氏は「4年以上の研究の末にたどり着いた」と話すように、素材開発に定評があるウブロでさえ、それほどの年月を要したのである。そして「科学と錬金術、そして遊び心と大胆さの絶妙な融合という、ウブロの魂を完璧に体現する素材です」と胸を張る。
このマジックセラミックを使用した『ビッグ・バン ウニコ マジックセラミック 』では、ベゼルにブルーとグレーのランダムなパターンが美しく融合し、すべての個体で異なる外観を持つ唯一無二の意匠となっている。しかもこれはたんなる塗装ではない。素材自体がこのパターンなのだ。なので、ケースを切っても金太郎飴のようにこの模様が出てくるのだ。
まざに“素材で魅せる”ウブロウォッチの真髄ともいえるものである。
ビッグ・バン ウニコ マジックセラミック自動巻き(Cal.HUB1280 ウニコ)、マジックセラミックケース、42㎜径、100m防水
452万1000円(世界限定20本・完売)
見たこともない独創的な金の結晶
最後は「ゴールドクリスタル」。ゴールドクリスタルを直訳すれば金の結晶となるが、クリスタルという言葉は、水晶などを指すことはあっても、金を称することはほぼないといえる。それは、自然界で金の結晶がつくられることがほとんどないからである。
ウブロは、その“金の結晶”を人工的に創作し、これまで見たこともない独創的なダイヤルを作り出したのである。
その過程を簡単に説明すると、24Kゴールド(純金)を融点まで加熱。蒸気とともに上昇したゴールドの微粒子を冷却することで、デリケートで複雑な形状のクリスタルを生み出すのだ。自然界ではほとんど見られないゴールドの結晶というだけでなく、蒸気の揺らぎでランダムに組成されるため、すべてのモデルが一点もののユニークピースとなるのである。
この『クラシック・フュージョン ゴールドクリスタル セラミック』では、ゴールドクリスタルを切削して形を整えた後、ブラックダイヤルにセットして透明なラッカーを施している。このとき、気泡が発生しないように注意を払いながら、20層以上も塗り重ねるというのだ。そして、それが乾くと針の回転を遮ることのないよう完全なフラットな状態に研磨する。
ダイヤルに配された、この美しい結晶組織は、決して錆びることなく未来永劫に黄金色に輝くのである。これがまさにゴールド素材の新しい使い方。ゴールドクリスタルを『クラシック・フュージョン』に採用したのもエレガントな腕時計をつくりたかったからだろう。『クラシック・フュージョン ゴールドクリスタル セラミック』は、ウブロの腕時計の中でももっとも気品のあるモデルに仕上げらている。
クラシック・フュージョン ゴールドクリスタル セラミック自動巻き(Cal.HUB1110)、ブラックセラミックケース、42㎜径、50m防水
301万4000円
常に革新性を求め、世界初といえる技術を生み出してきたウブロ。発表された素材はどれもが面白く、素材においては他ブランドよりも頭ひとつ抜けた存在であろう。
R&Dディレクターのマティアス・ビュッテ氏の話を聞く限り、まだまだ新しいアイディアがありそうである。これからもウブロの研究開発からは目が離せないようだ。
