出所:共同通信イメージズ
企業と従業員、上司と部下の関係性が変化し、それに伴いマネジメントの難易度も高まっている。こうした時代だからこそ、「創業時から受け継がれるトヨタの人づくりに学ぶべきヒントがある」と語るのが、2025年5月に著書『豊田章男が一番大事にする「トヨタの人づくり」 トヨタ工業学園の全貌』を出版したノンフィクション作家の野地秩嘉氏だ。トヨタの強さを支える国内有数の企業内学校の知られざる教育方法、そのから日本企業が学ぶべき人材育成のヒントについて、同氏に話を聞いた。
トヨタでは「働いている人の機嫌が良い」
──著書『豊田章男が一番大事にする「トヨタの人づくり」 トヨタ工業学園の全貌』は、トヨタ工業学園とトヨタ社内について7年かけて実施したインタビューをもとに執筆しています。なぜ、「トヨタの人材教育」をテーマに選んだのでしょうか。
野地秩嘉氏(以下敬称略) 私はトヨタ自動車の代表取締役会長、豊田章男氏に2018年、2024年と2回、単独インタビューしました。その間の6年間、トヨタの現場を取材しながら「トヨタの強さはなんだろう」とずっと考えていました。行き着いたのは、「現場で働いている人の機嫌が良い」ことです。
では、なぜ従業員が機嫌良く働けるのでしょうか。その秘密は教育にあるのではないか、と考えました。そこで生産現場の「おやじ」(生産部門トップの役職)である河合満氏(現エグゼクティブフェロー、前副社長)に聞くと「うちの人材教育は面白いから、トヨタ工業学園を取材した方がいい」と教えてくれました。
トヨタ工業学園は、モノづくりのプロを育てるための「企業内学校(職業能力開発校)」です。中学校を卒業した人が入る3年間の高等部、職業高校を卒業した人が入る1年間の専門部が設置されています。学費はなく、在学中には毎月給料をもらえる学校です。
実際に取材を進めると、一般の高校とは異なる先進的な教育内容と教育ノウハウを採り入れていました。EVや生成AI、自動運転などに関わる技能を、トヨタが誇る現場の第一人者が生徒に教えるから驚きです。
そして何よりも、トヨタが「人づくり」にお金と時間をかけており、トヨタの強さである人材教育の土台がトヨタ工業学園にあると感じ、本書を執筆することにしました。







