東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕氏(撮影:宮崎訓幸)
物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。
今回は、「渋滞学」の創始者であり、数理科学の専門家として政策提言にも携わる東京大学・西成活裕教授をゲストに迎え、渋滞や物流の課題を科学的に読み解いたあと、昨今の法改正で話題沸騰の物流統括管理者やCLO(Chief Logistics Officer、最高ロジスティクス責任者)、物流リーダーに求められる資質についても議論を交わした。今、物流に本当に必要な人材とは、どのような存在なのだろうか?
アリに学んだ渋滞回避の要諦
西成活裕氏(以下、敬称略) 私は「渋滞学」の他、「無駄学」の研究や生産・物流の改善コンサルティング、人材教育などに携わっていますが、その全てを貫く根本的視点は「全体最適」なんです。
渋滞解決のカギも「全体最適」です。一般には流れが詰まる「ボトルネック」を見つけて改善しようと思いがちですが、外的要因で発生した「ボトルネック型渋滞」は、解消できてもまた別の場所に渋滞が移行し、本質的解決にならないことが多い。半分くらいの事例ではボトルネックなしに、内的要因から「メタ安定型」渋滞が発生しているんです。
菊田 「メタ安定型渋滞」、ですか?
西成 私のオリジナル用語で、高速道路なら2車線が1車線になる箇所や工事区間など外的要因で渋滞するのは当然ですが、それがなくても渋滞は発生するんです。この内的要因は見える化が難しく、対策が立てにくい。
それはなぜなのか? 研究し続けて理由が分かるまで、6年もかかりました。それを私に教えてくれたのが、「アリ」だったんです。
菊田 今や「伝説」化している先生の逸話ですね。







