写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 物価高と人手不足、節約志向の高まりによって、食品スーパー業界はかつてない競争環境に直面している。ディスカウント勢の攻勢にどう対抗し、収益を確保するか。注目のライフ、バロー、そして業界のベンチマークとされるヤオコーは、それぞれの強みをどう生かしているのか。

 価格戦略から売り場づくり、M&A(合併・買収)やプライベートブランド(PB)強化まで、各社の最前線を流通専門誌『激流』の加藤大樹編集長に聞いた。

インフレ下で激化する食品スーパー業界の戦い

【月刊激流】

1976年、製配販にまたがる流通業界の専門誌として創刊。スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店など、小売業の経営戦略を中心に、流通業の今を徹底的に深掘り。メーカーや卸業界の動向、またEコマースなどIT分野の最前線も取り上げ、製配販の健全な発展に貢献する情報を届ける。

――物価高、人手不足、そして節約志向の強まり。今、食品スーパーを取り巻く経営環境は一段と厳しさを増しています。

加藤大樹氏(以下、敬称略) 『激流』8月号では、上場している食品スーパー25社の前期決算を分析しました。すると、増収増益となった企業の方がむしろ多かったのです。一見、意外に思われるかもしれません。物価高によって消費者の購買意欲が下がるイメージがありますが、実際は違いました。

 確かに販売点数は減りましたが、それ以上に一品あたりの単価が大きく上昇したため、結果として客単価が伸びたのです。つまり、「買い控え」は起きたが、「単価上昇」がそれを上回ったという構図です。

 さらに、客数が伸びた企業はしっかりと増益を確保し、逆に客数が減った企業は減益になるという傾向も鮮明でした。中でも印象的だったのは、米の価格上昇が業績に貢献した点です。

 多くの消費者が「米が高くなった」と口をそろえますが、米は生活必需品。価格が上がっても買わざるを得ず、それが販売金額の押し上げにつながっていました。