撮影:榊水麗

 パナソニック ホールディングスが2021年10月からスタートした「デザイン経営実践プロジェクト」。社長直下にプロジェクトチームを設置し、デザインの思考プロセスを経営戦略に生かす試みを進めてきた。プロジェクトの狙いと成果は。デザイン経営を社員はどう受け止めているのか? プロジェクトを担当するパナソニック ホールディングス 執行役員 デザイン担当の臼井重雄氏に話を聞いた。

不確実な未来を予想するのではなく

──パナソニックグループは2021年に「デザイン経営実践プロジェクト」を立ち上げました。どのような経緯でプロジェクトがスタートしたのでしょうか。

臼井重雄氏(以下敬称略) 2021年6月に楠見雄規が社長に就任(※)した際、執行役員のデザイン担当である私の役割は「色や形だけでなく、思考のデザインをすることだ」と言われました。デザインは、今までの延長線でものを考えず、遠い先の未来や人を見据えて新しい何かを生み出す。こうした長期目線の思考法を経営に生かしたいという話が出発点にありました。

※当時はパナソニックの代表取締役 社長執行役員 CEO。その後、持株会社制への移行に伴い、2022年4月からパナソニック ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 グループCEO。

パナソニック ホールディングス 執行役員 デザイン担当の臼井重雄氏

 そこからは、楠見と数カ月壁打ちをしながら、そもそもデザイナーの思考とはどのようなものか整理していきました。そのプロセスを経てまず作り上げたのが、パナソニック流の「デザイン経営」の定義です。ですから、私たちのデザイン経営は、当時、経済産業省や世の中で言われていたそれとは違う内容になっています。

──どういった定義でしょうか。