トリドールホールディングス 執行役員 CIO兼 CTOの磯村康典氏(撮影:榊水麗)
讃岐うどん専門店「丸亀製麺」などの飲食店ブランドを展開するトリドールホールディングスは、シフト作成の自動化、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の全社導入、クラウド移行などDX施策を次々と進め成功させてきた。このスピード感ある変革の裏には、“現状把握に時間を割かない”という、独自のプロジェクトの進め方があるという。その真意とは? 同社の執行役員 CIO(最高情報責任者)兼CTO(最高技術責任者)である磯村康典氏に話を聞いた。
本場讃岐の感動体験と素早いレジ通過の両立を探求する
――磯村さんはトリドールホールディングス(HD)のCIO(最高情報責任者)兼CTO(最高技術責任者)としてグループ全体のDXを主導しています。トリドールHDはどのような方針でDXに取り組んでいますか。
磯村康典氏(以下、敬称略) 当社は「丸亀製麺」をはじめとした20以上のレストランブランドを運営し、30の国や地域へ出店しています。海外事業は売上の約4割を占めるようになり、世界に通用するグローバルフードカンパニーを目指しています。グループ全ての業態で、お客さまに「食の感動体験」を届けることをミッションとしており、DXはその感動体験を支える基盤作りとして位置付けています。
例えば丸亀製麺では、粉から製麺し、麺を茹で上げ、お客さまにお出しするまでのプロセスを全て店舗内で行います。その様子を見せることで、湯気が立ち上る讃岐の製麺所さながらの臨場感を演出しています。
そして、お客さま自身が麺を受け取り、お好きな天ぷらを選んでお会計に向かう――こうした一連の体験を大切にしているので、ここにロボットを導入して自動化を進めるようなことは考えていません。
一方で、お会計の場面では、さまざまなキャッシュレス決済を導入して、レジの通過をスムーズにする工夫をしています。人の手により感動体験を届けつつ、そうでないところは素早く流れるようデジタルを活用して効率化することが重要です。
――丸亀製麺では、天ぷらをレジのスタッフが見分けていますが、ここに何らかのシステムを組み込む可能性もありますか。
磯村 確かに、レジのスタッフが天ぷらを見て、その商品名を判断するのは結構難しいことで、かなりの経験が求められます。






