文=のかたあきこ 写真=星野リゾート
敷地内を小川が流れ、夏も涼やか。中庭は湯上がりや夕涼みに人気のスポット
自然環境と調和する雁木をめぐる宿
「界 アルプス」は、立山黒部アルペンルートの入り口に位置する信州・大町温泉郷にある。温泉街最奥に位置し、北アルプスを借景にしながら、地域の鎮守社に見守られるようにして宿が立っている。
北アルプスを背に平屋建ての棟が立ち、雁木の通路で結ばれている
小川が流れるのびやかな敷地に、平屋建ての食事処や温泉棟、客室棟が連なる。施設は雪国のアーケード“雁木(がんぎ)”の通路で結ばれ、雪や雨を気にすることなく快適に過ごせるのが魅力だ。「信州の贅沢な田舎を体感する温泉宿」を宿作りのコンセプトにしていて、囲炉裏でのふるまいなど楽しみを用意する。
囲炉裏では信州名物のおやきや地酒などのふるまいがある
客室は全48室が「信濃もてなしの間」と呼ばれるご当地部屋で、地域の伝統工芸を設えている。例えば、上田紬や地元作家による切り絵などが施され、明かり採り障子や行灯には、地元の松崎和紙が使われている。大町は平安時代から和紙の産地だという。天然和紙の風合いが光を通して感じられ、漉き込まれた木の葉が温かい雰囲気を醸し出す。
客室のうち8室に温泉の内風呂が備わっている。温泉は北アルプスの麓に位置する葛温泉から引湯される。クセのない単純温泉は、赤ちゃんから年配者まで親しまれる優しい肌心地だ。客室はほかに、プライベート感があるメゾネットタイプの離れを2室用意。離れには薪ストーブがあり、薪をくべる体験も。
