文=のかたあきこ 写真=木下清隆、星野リゾート

ステンドグラスから光が差し込む大浴場。ぬる湯とあつ湯でリフレッシュ

「地獄パワーにふれる、異国情緒の宿」

界 雲仙は「雲仙地獄」に面して立っている

「界 雲仙」は雲仙天草国立公園内、標高約700mの雲仙温泉にある。長崎空港から車で約90分。つづら折りの道を上って温泉街へと近づくにつれ、硫黄の香りが強まってくる。湯けむりがあちらこちらで立ち上っている。

床から天井まで全面ガラス張りのロビー。真っ白な噴気が眺められる

 宿が立つのは「雲仙地獄」という高温の噴気(ガス)や熱水(温泉)が噴出するエリア。ロビーや客室は地獄に面しいて、地の底から吹き出す蒸気が織りなすダイナミックな景色が眺められる。「地獄パワーにふれる、異国情緒の宿」がテーマだという。

客室は地域の伝統工芸で設える「ご当地部屋・和華蘭(わからん)の間」。写真は特別室

 長崎は16世紀半ばから南蛮貿易で栄え、鎖国時代にも唯一、海外に開かれた貿易港。キリスト教文化も色濃い地域だ。客室は地域の伝統工芸で設える「ご当地部屋・和華蘭(わからん)の間」と名付けて、日本(和)と中国(華)とオランダ・ポルトガル(蘭)の文化が融合する長崎の文化を紹介する。例えばステンドグラスの間仕切りや和紙のスタンドライト、長崎ビードロ(=ガラス)を使ったライト、島原木綿、波佐見焼や郷土の古賀人形が空間を彩る。

客室の半分以上を露天風呂と湯上り処が占める「客室付き露天風呂」

 全51室ある客室のうち、16室は「客室付き露天風呂」と名付けられ、空間の半分以上は雲仙地獄を眺める露天風呂と湯上がり処が占めている。湯船に満ちるのは、酸性、含鉄(II、Ⅲ)—単純温泉。鉄や硫黄などを含むpH2.8の酸性泉は雲仙地獄から湧出。2つの源泉が混じるため、日によって湯の色が白や褐色など変化する。よくあたたまる温泉で、肌がすべすべになる。

界の湯守りによる温泉紹介「温泉いろは」

 入浴前には、界の湯守りによる「温泉いろは」体験をぜひ。雲仙の歴史や泉質、効果的な入浴法を解説するほか、宿すぐの地獄まで歩き「燗付け(かんつけ)」という地熱を利用した約100年前からの給湯設備などを紹介する。