文=のかたあきこ 写真=木下清隆
北アルプスの麓で湯けむり上げる小さな温泉集落
北アルプスの麓に点在する5つの温泉、奥飛騨温泉郷。そのうちのひとつ、福地温泉は、古民家の宿など11軒の温泉宿が点在する小さな集落である。秘境ながらアクセスがいい。新宿発の高速バスなら約4時間、車窓には壮大な山々が映り、気持ちが晴れる。圧倒的な非日常の風景に心が踊る。
「元湯 孫九郎」は通りに面して、重厚な木造平入屋敷がたたずむ。先祖代々の住まいであった築150年の民家を、1968年から宿屋として使用し営業している。現在はロビーとなっている吹き抜けの建物は、同じ村から移築した古民家だという。縦横に走る太い梁や囲炉裏の喫茶スペースを抜けて客室へと向かう。
客室は全24室あり、2階、3階フロアの15室が近年リニューアルされた。人気があるのは鉄筋建ての天領館3階にある二面採光で明るい306号室。世界的木工家具ブランド・飛騨産業の家具が配され、モダンなデザインとぬくもりある木肌に癒される。
夕食は食事処で。飛騨牛A5等級の温泉しゃぶしゃぶをはじめ、山菜料理、川魚の造りや塩焼き、五平餅やアマゴの天ぷらほか山の味覚が満載だ。飛騨牛の朴葉焼きステーキ(別注)もぜひ味わいたい。