温泉好きは音楽好き、湯上がりのリラックス空間

単純温泉が満ちる露天風呂

「元湯 孫九郎」は自家源泉を4本所有し、独自のシステムで加水・加温なしの源泉100%掛け流しを、全館6つの浴槽で行っている。これは豊富な湯量と湯守りの情熱が成せる技だ。野趣あふれる露天風呂は男性用と女性用と貸し切りの3か所がある。泉質は単純温泉で、肌を整える美肌の湯と好評だ。緑褐色のにごり湯で、目でも楽しませる。

内湯はナトリウム-炭酸水素塩泉。露天風呂とは泉質が異なる

 新装された木造りの内風呂「大湯」では、露天風呂とは異なる泉質のナトリウム-炭酸水素塩泉が注がれる。こちらは無色透明。ぬる湯とあつ湯のふたつの浴槽があり、交互に入ることで新陳代謝が高まる。飲泉もでき、市販の胃腸薬とほぼ同じ成分という。洗い場には女将のアイデアの「髪洗いの湯」が設けられ、弱酸性の湯で髪を洗うと仕上がりがふんわりと軽い。貸し切りの内湯も快適だ。

心地よい音楽空間「音泉リビングParagon」

 湯上がりは部屋でゴロゴロ、またはリニューアルで誕生した「音泉リビングParagon」で寛ぐ。二代目主人の沖本啓介さんが学生時代、東京のジャズバーで出合ったというスピーカー「Paragon」でフュージョンやジャズなどの音楽が気持ちよく流れるなか、読書や珈琲も楽しめる。「温泉が好きな人は音楽も好きなはずだ」とご主人。

福地温泉の宿泊者だけが利用できる「舎湯」

 朝食後に、徒歩すぐにある「舎湯(やどりゆ)」でくつろぐのもいい。ここは福地温泉の宿泊者だけが利用でき、大きな囲炉裏や足湯がある。若旦那衆が地酒や鍋をふるまう冬のイベント・あつ鍋(写真)で知られる場所だ(コロナ禍、開館・開催は要問い合わせ)。

昔話のような湯町をそぞろ歩く楽しみもぜひ

 福地温泉は平安時代、村上天皇が療養に訪れたと伝わる古湯だ。そのため源泉は「天皇泉」というが、温泉街の歴史は意外にも50年ほど。それが、昔話のような湯町を形成し、温泉ファンに知られるようになったのは、地域が一体となり景観統一や温泉をはじめとする情報発信に努めてきたからだ。隠れ里のような静かな温泉地でのんびりと休息ができる。