写真提供:共同通信社
経団連が「コンテンツ省」の設置を提言するなど、漫画・アニメ・ゲームといったエンタテインメント産業に注目が集まっている。実際、日本発のキャラクターはグローバル市場でも高い人気を誇り、IP(知的財産)としての収益は急増中だ。そうした中、コンテンツビジネスの最前線では「キャラクター経済圏」を巡る熾烈(しれつ)な競争が繰り広げられている。本稿では、『キャラクター大国ニッポン 世界を食らう日本IPの力』(中山淳雄著/中央公論新社)から内容を一部抜粋・再編集。大ヒットコンテンツを生んだ2社にフォーカスし、そのIP戦略を読み解く。
福岡の新興ゲーム会社レベルファイブが企画・制作した「妖怪ウォッチ」は、2010年代半ばに「ポケモン」をしのぐ人気を博した。同社躍進の原動力、ゲームを軸としたメディアミックス戦略とは?
妖怪ウォッチ「打倒ポケモン」の舞台裏、
大企業たちの“ガチすぎる戦い方”の光と闇
『キャラクター大国ニッポン世界を食らう日本IPの力』(中央公論新社)
■ ポケモンを超えた「妖怪ウォッチ」、生みの親は新興企業?
「妖怪ウォッチ」とは、漫画やアニメ、ゲームソフトなど、複数媒体を用いたクロスメディア戦略を前提としたプロジェクトとして誕生した作品だ。
2014年7月に発売された家庭用ゲーム『妖怪ウォッチ2元祖/本家』は年間305万本、12月発売の『妖怪ウォッチ2真打』は200万本も売れている。
これは同じ年に発売された『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』の約246万本を上回り、モンハン・スマブラなどの同時期の他社競合作品を上回る年間販売記録であった。
この年、妖怪ウォッチを生み出したゲームソフト会社のレベルファイブ(LEVEL5)は、合計621万本のゲームソフトを販売し、任天堂に次ぐ「日本第2位」のメーカーとなっている(バンダイナムコやソニーよりも上位)。まさに、衝撃的なジャイアントキリングの事例と言える。
もともと“新興”ゲーム会社はスクウェア・エニックスにせよ、カプコンにせよ、コーエーテクモにせよ、1980年代に出そろっていた。すでに成熟していたゲーム業界において、まだ創業15年足らずの福岡の会社がゲーム業界の頂点に上り詰めた時期があったのだ。
ゲームや玩具だけに限らない。2014年12月の映画『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』は初動2日間で16億円、148万人動員と東宝史上新記録を飾った。最終約77億円の興収は同年のポケモン映画の29億円を倍以上引き離した結果であった。






