広い白砂の庭に展示された鉛のオブジェ。鉛は錬金術の素材でもあり「人間の歴史を追うことができる十分な質量を持った材料」とキーファー
キーファー展で文化財の「文化的な利用」を考えてみる
「アンゼルム・キーファー:ソラリス」展の話に戻ろう。
主催者は「二条城は築城以来、戦火に見舞われることもなく、ある意味、平和の象徴でもあった。戦禍や人間の業をテーマにしてきたキーファーの作品がここに安置されることの意味は深い」と語った。

玄関の《オクタビオ・パスのために》は、原爆投下を題材にした作品
1945年に広島で撮影された写真をヒントにした《オーロラ》には、朽ちた乳母車が取り付けられている
また、キーファー自身も、元離宮二条城で金碧障壁にインスパイアされて、金を多用した出品作を制作し、場所へのオマージュとした。現代の巨匠の作品の輝きを通して、狩野派伝統の豪壮な美を再発見する観客もいるだろう。作品を、建物の陰影や自然光の中で鑑賞できるのも貴重な体験だ。照明設備を設営できない、という場所のハンディをメリットに転じた。
作品は自然光で展示された。暗い室内での展示も、補助光のみ。キーファーの世界観の深みを味わえる
狩野派の障壁画や琳派の絵画にインスパイアされ、金を多用した絵画作品
場所と展示と観客との間に起こる、こうしたインタラクションを「文化財の、文化的な利用」とするならば、この展覧会は文化財活用の今後を考えるひとつのサンプルとして鑑賞できるだろう。
戦後、アメリカの「モーゲンソー計画」のもと、農業国への転換を強いられたドイツの歴史をテーマにしたインスタレーション。大広間に砂を敷き、麦畑を出現させた
アンゼルム・キーファー:ソラリス
元離宮二条城内 二の丸御殿台所、御清所など
6月22日まで、一般2,200円(別途入城料800円)
事前にネット予約制
元離宮二条城内 二の丸御殿台所、御清所など
6月22日まで、一般2,200円(別途入城料800円)
事前にネット予約制
