売れ筋は最上位グレード

 INSTERには3つのグレードが用意されています。廉価版の“カジュアル”は284万9000円、中間グレードの“ヴォヤージュ”は335万5000円、そして上級の“ラウンジ”が357万5000円。駆動用バッテリーの容量はカジュアルが42kWh、ヴォヤージュとラウンジが49kWhで、航続距離は後者で最大458km(WLTP)と公表されています。300万円以下という価格設定はかなり挑戦的ですが、実際には「お客様の約70%がラウンジを選んでいる」そうです。

 駐車場内を動いている時から薄々気が付いていたのですが、公道で出てもやはりそのコンパクトなボディサイズと取り回しのよさに溜飲が下がります。近頃のクルマはどれもこれも大きくなってしまい、軽自動車を除く乗用車の5ナンバーが占める割合は約30%にまで落ち込んでいます。5ナンバーは日本独自の規定とはいえ、日本の交通環境にはいまでも5ナンバーが最適であることを思い知らされました。

パワースペックは97PS/147Nm(カジュアル)と115PS/147Nm(ヴォヤージュ/ラウンジ)の2種類で、駆動形式は前輪駆動のみ。回生ブレーキの“AUTO”モードでは、前車に追従して停車までを自動的に行う

 操縦性や乗り心地などに違和感を感じる部分はほとんどありません。実はヒョンデは日本仕様として専用の作り込みを行ったそうです。例えば、ダンパーを含むサスペンションのセッティングには30種類あって、その中から日本の道路に最適なものを走り込んで決めたとのこと。パワーステアリングも、駐車時にステアリングをたくさん切る機会の多い日本の事情に合わせてアシスト量を増やし、軽く回せるようにしているそうです。

たいていの安全装備は標準で、ペダルの踏み間違いを感知して加速を抑制するアシスト機構なども備える。エアバッグは運転席のセンターコンソール側も含めて計7個を搭載。

 デザインは好き嫌いが分かれるかもしれませんが、トヨタとフルクスワーゲンに次ぐ世界第3位の販売台数を誇る自動車メーカーが手掛けたプロダクトらしく、INSTERはクルマの基本性能がしっかり担保されたコンパクトBEVと言えるでしょう。韓国料理もK-POPも韓流ドラマも大好きな日本人でも、一部では韓国車に関していまだに距離を置いてしまう心情は理解できます。いっぽうで、こういうクルマを求めていた方が少なからずいらっしゃるのも事実で、選択肢が増えるという観点では歓迎すべきことだと思っています。

スマホやスマートウォッチを鍵の代わりに使えるデジタルキーを始め、スマホのワイヤレス充電、前席のヒーター/ベンチレーション機能、車外で家電などへの電力供給が可能なV2Lなど、装備も充実している