
高級ワインにとってアルコールは必ずしも必要ではない
現在、ノンアルコールワインは一般的に価格が安い。これは、だから質的にもそこそこというような単純な話ではない。飲み物の価格は市場の状況や税金なども影響するし、何より歴史の浅いノンアルコールワインはワインほどにまだ数がない。世界中で、場合によっては何千年と生産されているワインだって、その9割くらいは手頃な価格だ。誰もが名前を知るようなスター的ワインは得てして高価だけれど、量的にはごく僅かに過ぎない。だから巷で見かけるノンアルコールワインが安いのはそんなにおかしなことではない。
ただ、市場が大きくなればその中から高級品が出てくるのは当たり前の話でフレンチ・ブルームは高い。スタンダードのル・ブランとル・ロゼで7,452円(税込)。これはスパークリングワインの中でも高級なシャンパーニュのスタンダードラインと同水準だ。
特別品の「ラ・キュヴェ・ヴィンテージ」になると18,144円(税込)。これはシャンパーニュであっても高い部類。私は最初、結構ビビって、飲むのを躊躇したほどだった。

とはいえ、飲んでみるとこれは確かに高級なワインに比肩すると感じられたのは以前も書いたとおり。そしてそれは不思議な感覚だった。ワインと真っ向勝負をするならアルコールなしというハンデは大きすぎる。銃で武装した相手に丸腰で挑むようなものだ。このラ・キュヴェ・ヴィンテージは、しかし、何らかの方法でこのハンデを埋めているのだ。
どうやったのか? 今回、ロドルフさんの説明を聞いて、なるほど、その手があったか!と謎解きをしてもらった。そして、その発想は、かつて自然派ワインがワイン好きの間で物議を醸し出したような感覚とちょっと近いと感じられ、ノンアルコールワインというのは、いまだ新興勢力であるがゆに自由なワインなのではないか?と期待するに至った。
あんまりもったいぶってもしょうがないのでそろそろ本題に入るけれどその前にひとつ、ロドルフさんの印象的な言葉を引用したい。
「アルコールが欲しくてわざわざピュリニィ・モンラッシェ(世界最高の白ワイン産地)のワインを買う人はいない」
ガンダム世代の私にはそれが「アルコールの量の違いがワインの良し悪しの決定的差ではないということを教えてやる! 」と聞こえた。
そしてグラスには新作「エクストラ・ブリュット」が注がれた。