
モノコック構造の利点
こうした改良が施されたディフェンダーOCTAで南アフリカの未舗装路を中心に2日間で700kmほどを走行したが、前述のとおり、肉体的な疲労はほとんど感じなかった。私は、似たような走り方を、名作の誉れ高い「とあるクロスカントリーSUV」で体験したことがあるが、そのときは1時間ほどでグッタリとしたことを思い出す。ちなみに、ここでいう“名作”はクロスカントリーSUVで一般的なフレーム付きのボディー構造を採用しているのに対し、ディフェンダーは(さらにいえば、最新のレンジローバーやディスカバリーなどもすべて)フレームを持たないモノコックボディーを用いている。
「一般的にいって、フレーム付きのモデルは路面からの振動がキャビンに伝わりやすい。いっぽうのディフェンダーはモノコックボディーを採用しているため、路面からの振動を遮断しやすく、結果として乗員の疲労軽減に役立っているのです」
ディフェンダーOCTAの開発で中心的な役割を担ったエンジニアのコリン・カークパトリックは、私にそう教えてくれた。また、オーフロード好きの間では、よく「フレーム付きボディーのほうがモノコックよりも堅牢で耐久性が高い」といわれるが、ディフェンダーOCTAの開発に際しては100万km以上のテスト走行を実施。耐久性については万全の対策を施したという。

実は、私が国際試乗会に参加したのは2週間にわたって開催されたスケジュールの最終日だったが、これだけ過酷な使われ方をしても、ボディーや足回りがへたっている印象が一切なかっただけでなく、車内からガタピシという嫌なノイズが聞こえなかったことにも驚かされた。
BMWと共同開発した排気量4.4リッターのV8ツインターボエンジンは、極低回転からトップエンドにいたるまでレスポンスよく強大なパワーを発揮してくれるので、動力性能にはまったく不満を覚えなかった。

また、試乗車はオフロード用タイヤを装着していたにもかかわらず、舗装路でも良好なハンドリングと乗り心地を示した。とりわけハンドリングについては、大胆なブロックパターンを採用したオフロードタイヤを装着していたことが信じられないほど優れていた。まさにディフェンダーOCTAはオールラウンダーな性能の持ち主といっていいだろう。

伝統的な価値を一切損なうことなく、そこに新たな価値を盛り込むことで商品性をさらに高めるという柔軟な発想力は、これを実現する優れたテクノロジーを生み出す技術力とともに、ジャガー・ランドローバーが持つ特別な強みと評価したい。
このツアーの様子は大谷 達也氏のYouTubeチャンネル「The Luxe Car TV」でも公開中
全長×全幅×全高:5,003×2,105×1,995 mm
ホイールベース:3,023mm
エンジン:4,395cc V8 ツインターボ マイルドハイブリッド
最高出力:635PS
最大トルク:750Nm
トランスミッション:8段オートマチック(+副変速機)
最高速度:160 km/h(Goodyear Duratrac Advanced 275/60 R20 装着時)
0-100km/h加速:4.0秒
空車重量(EU):2,585kg
駆動方式:四輪駆動
タイヤ:275 / 50 50 R20 Michelin Primacy All-Season tyres
渡河水深:1,000mm
アプローチアングル:40.2度
デパーチャーアングル:42.8度
グランドクリアランス:323 mm
最大牽引可能重量:3,500 kg
ルーフロード(停車時 / 走行時):300kg / 168kg
*以上の数値はEUにおける発表値
価格:20,370,000円~