E-TYPEは特別なReborn

 最後に紹介するEタイプは、ジャガーを代表するスポーツカーとして広く知られたモデル。ただし、今回、私が操ったのはEタイプ・リボーンと呼ばれる特別な1台である。

 ジャガー・ランドローバー・グループは、同社の伝統を守るとともに、彼らのヒストリックモデル愛好家をサポートするためにジャガー・ランドローバー・クラシックという組織を設立。その中核拠点として、ジャガーと縁の深い街であるコヴェントリーにクラシック・ワークスという名の施設を2017年に完成させた。今回、このクラシック・ワークスも見学したが、ここではジャガーやランドローバーのヒストリックモデルをレストアするだけでなく、レストアに必要なパーツやレストア済みの車両を販売するほか、ジャガーやランドローバーが設立された当時からの資料、設計図などを保管。さらには彼らの歴史に名を残す貴重な車両数百台をコレクションするなど、伝統を重んじるイギリス車メーカーらしい取り組みが見られた。

 私が試乗したEタイプ・リボーンも、このクラシック・ワークスでレストアされた車両だが、そのベース車両の選定から自分たちで行うというこだわりようで、たった10台のみが製作されたという珠玉のヒストリックカーである。

こちらは別のイベントで撮影されたものだが今回と同じクルマ

 その徹底した作り込みと完成度の高さは車両をひと目見ればただちに理解できるはず。なにしろ、内外装が放つ輝きは「きっと新車のころもこんな具合だったんだろうなあ」と思わせるほどのもの。いや、熟練の職人によって手作りされたEタイプ・リボーンは、おそらく新車当時をはるかにしのぐクォリティで作り上げられたに違いない。

 しかも、完成度の高さは見た目だけでなく、その走りにもはっきりと現れていた。

 電装部品の一部が現代のものに置き換えられているだけで、エンジンは3連式SUキャブレターを含めて当時のスペックそのままというが、低速域からむずがることなく力強いトルクを発揮するあたりは、とてもキャブレターで燃料を供給しているとは思えない。

 シンクロメッシュを備えたギアボックスは特に気を使わなくてもスムーズにシフトできるほか、乗り心地は現代の水準で評価しても快適なうえ、遊びの少ないステアリングは正確で、60年以上前に設計されたクルマであることがとても信じられないほど。正直、現代の交通環境で走らせても、不自由することはほぼないくらいの扱い易さと完成度を備えていたのである。