ジャガーはどんなブランドなのか?

 いっぽうで、この3台に共通する具体的なフィロソフィーのようなものを見いだすのは難しかった。ハンドリングや乗り心地、さらにはパワートレインの特性を含め、Eタイプ・リボーン、マーク2、XJクーペはそれぞれの個性を備えていて、たとえば「快適性を重視したソフトな乗り心地」とか「回せば回すほどパワーが湧き出る官能性溢れるエンジン」といった明確な共通点は見当たらなかったからだ。敢えていえば、ウッドとレザーを多用したインテリアと優雅なエクステリア・デザインといったことだろうが、それさえも、時代に応じて微妙に解釈が異なっている。なにかひとつを取り上げて「これぞジャガー!」と声高に主張するのは容易ではない。

 それでも、敢えていうならエレガントやスポーティといったキーワードを、最新の解釈で表現したクルマがジャガーと説明できないこともない。だからこそ、時代に応じてその解釈や表現が変化していったとも捉えられる。

 そこまで思い至ったところで、ハタと気づいたことがある。

 最新のデザインコンセプト“ジャガー・タイプ00”を発表するとき、彼らが改めて掲げた「Copy Nothing」というスローガンこそ、ジャガーの思想そのものといっていいのではないのか。

 彼らは時代とともに進化し続けた。つまり、変化を恐れなかった。表層的な部分に個性らしきものが見当たらないのは、だから当然のことなのだ。言い換えれば「Copy Nothing」は誰かの真似をしないという意味だけでなく、自分たちのヘリテージさえコピーしないという、決然たる意思を反映したものなのである。

 およそ90年にわたって受け継がれてきた革新の歴史。その延長線上に位置するのがタイプ00であると捉えれば、その奇抜なデザインからまた別の美しさを見出せるのではないだろうか。