文=酒井政人

高校歴代5位の好タイムで日本人トップに立った濵口大和(佐久長聖)※写真は2024年6月28日、U20日本選手権、男子5000m決勝で優勝した時の濵口 写真=YUTAKA/アフロスポーツ

女子1500mはドルーリーが攻めの走り

 未来のオリンピア候補が福岡・博多の森陸上競技場で〝高校ナンバー1〟を目指した。そのなかで1500mは男女ともハイレベルの戦いになった。

 女子1500mは800mで1分59秒93の日本記録を持つ久保凛(東大阪大敬愛高)は棄権したが、4人のケニア人留学生と6月の日本選手権で7位入賞を果たしたドルーリー朱瑛里(津山2)が決勝に進出した。

 ドルーリーは昨年、インターハイで日本人トップの3位に入り、高1歴代最高の4分15秒50をマークしている選手。日本選手権のレース後には、「高校記録(4分07秒86)の更新を目標に頑張っていきたいと思います」と話していた。

 そして決勝ではドルーリーが積極的な走りを披露する。4人の留学生に割って入るかたちで3番手につけると、先頭は400mを66秒、800mは2分14秒で通過した。

 しかし、「脚がぶつかることもあって、中盤からリズムが崩れてしまいました。そこから流れに乗れなかった感じです」とドルーリーは徐々に先頭集団から引き離されていく。最終的には4分21秒82の11位でレースを終えた。

「先頭集団に食らいついて、ラストでかわすというプランを持っていましたが、思うような走りができませんでした。プレッシャーを感じることもあったんですけど、弱点を克服して次に向けて頑張っていきたいと思います」

 ドルーリーは8月下旬にペリー・リマで開催されるU20世界選手権の女子1500m代表に選ばれており、今回の反省を世界の舞台でぶつけるつもりだ。

 

穗岐山が高校歴代3位の好タイム

 ドルーリーの背中を見つめて走ったのが4分17秒92の四国高校記録を持っていた穗岐山芽衣(山田3)だ。

 留学生が高速レースに持ち込むことを予想して、先頭集団にはつかなかった。「例年、先頭集団はだんだん落ちてくる感じがあったので、一定の距離を置いて、離されないように走りました」と冷静にレースを進めた。

 そして3周目に入ると、「雲の上の存在だと思っていた」というドルーリーの背中に迫っていく。そして穗岐山が〝覚醒〟した。

「ドルーリーさんの活躍はテレビなどで見ていて、速くて凄いなと思っていました。そんな選手の背中が近づいてきて、今までの自分ならドルーリーさんより上にいく力はないという気持ちがあったんですけど、これまでのしんどかった練習や、お世話になった方々の顔が頭に浮かんで、『自分なら絶対にできる』と思ったんです」

 ラスト1周に入る直前にドルーリーを抜いて日本人トップに立った。さらにふたりの留学生をかわして、最後はナンバラ・サラムトニ(興譲館1)に迫って、ゴールに駆け込んだ。

 優勝はジャネット・ジェプコエチ(倉敷2)で4分07秒59、2位はサラムトニで4分13秒04。穗岐山は高校歴代3位の4分13秒67で銅メダルを獲得した。

「ドルーリーさんは絶対に勝てない存在だと思っていたので、その他の日本人選手のなかでトップになりたいという気持ちで臨みました。監督から『留学生の力を借りて4分15秒までいけたら凄いぞ』と言われていたので、タイムは大満足ですね。3年生になって、練習一本一本に集中して取り組んできたのが、ここまで伸びた要因だと思います」と穗岐山は笑顔を見せると、「3000mでも表彰台を狙って頑張りたい!」と声を弾ませた。