文=酒井政人 写真提供:日本陸上競技連盟/フォート・キシモト

左から、飯塚翔太(ミズノ) 栁田大輝(東洋大学)、東田旺洋(関彰商事)、坂井隆一郎(大阪ガス)、桐生祥秀(日本生命)、上山紘輝(住友電工) 、鵜澤飛羽(筑波大学)

サニブラウンを除くメンバーが集結

 パリ五輪の男子4×100mリレー代表が都内で練習を公開した。海外を拠点にしているサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)を除くメンバーが集結。悲願の〝金メダル〟に向けて、本格始動したことになる。

 この日は2走・栁田大輝(東洋大)→3走・桐生祥秀(日本生命)、3走・鵜澤飛羽(筑波大)→4走・東田旺洋(関彰商事)、3走・桐生→4走・上山紘輝(住友電工)、1走・坂井隆一郎(大阪ガス)→2走・栁田という組み合わせで40mのバトンタイムを計測。3秒7~8台の好タイムを連発させた。

 長年、リレーチームの指揮を執ってきた日本陸連の土江寛裕短距離ディレクターも今回のチームに大きな期待感を抱いている。

「昨日は別の組み合わせでバトン練習をしましたが、どの選手が入っても成立するくらい、すごくいいチームになっています。例年と異なり、今回は(走順の)バリエーションが5、6パターンもある。どのメンバーでも金メダルを狙っていけるようにできると思います」

 

金メダルを目指す戦略は!?

 日本の男子4×100mリレーはリオ五輪で銀メダルに輝くなど、世界大会でメダルを獲得してきた。しかし、東京五輪は予選でまさかの途中棄権。パリ五輪では悲願の〝金メダル〟を目指しているが、どんな戦略で臨むのか。

「東京五輪はリレーにかなり軸足を置いた戦略でやりましたが、それによって個人が振るわなかった。今回は個人のレースをしっかり戦ったうえで、いいメンバーを並べることに尽きるかなと思います」と土江ディレクター。個人の100mはサニブラウン、坂井、東田が、200mには鵜澤、上山、飯塚翔太(ミズノ)が出場する。彼らの負担をなるべく抑えながら、日本チームとして〝最高のオーダー〟を組んでいきたい考えだ。

 リレーではバトンを「受ける」「渡す」の両方をこなす2走と3走の負担が大きい。そこで今回は栁田を2走に固定。個人種目の出場を逃した最年少が〝大役〟を務める予定だ。

「エースクラスがリレーに専念できるという意味ではポジティブな影響がある。両側にバトンパスがある区間はストレスが大きいんですけど、栁田がリレーの準備に時間を割けるのはいい効果があるのかなと思います。まずはハキームがいない状態のリレーをきちんと作って、個人(種目)の走りを見て最終的に決めるというかたちです」(土江ディレクター)

 7月20日のダイヤモンドリーグ・ロンドン大会は、1走・坂井、2走・栁田、3走・桐生、4走は上山 or 東田を起用予定。3走までうまく流れれば、4走は個人種目でもメダルが期待されるサニブラウンの起用が自然といえるだろう。一方で、5月の世界リレー(予選)ではサニブラウンが1走を務めて、強烈な印象を残している。

「ハキームの1走がとんでもなく良かった。しかもバトンを受けるより、渡す方がストレスは低いんですよ。そう考えると、ハキームの1走は個人種目に対してもプラスの影響はあるかなと思うんですけど、ナショナルチャンピオンの坂井君は1走のスペシャリストでもある。誰かを外して、最高のオーダーを作っていくことになります。本当に全く決めきれていません」と土江ディレクターは頭を悩ましている。

 チームジャパンは過去のデータなどから日本記録を0秒03上回る「37秒40」を〝金メダルライン〟と試算した。「目標タイムは37秒40ですけど、アメリカがしっかりつないだら絶対に勝てません。アメリカに先行されないようなレースをすることが大事かと思っています。37秒40を現実的な目標タイムとして、リレーを作っていきたい」と土江ディレクターは金メダルの挑戦を掲げていた。

 

選手たちの熱い気持ち

 バトンを握る選手たちの気持ちも高ぶっている。日本選手権の男子100mを連覇した坂井隆一郎(大阪ガス)は個人種目で「ファイナル進出」を目指しており、「決勝に行くには9秒台が必須だと思っています」とパリ五輪で日本人5人目の9秒台に突入するつもりでいる。

 男子4×100mリレーに関しては、「期待されているのは1走だと思っているので、しっかりスタートダッシュを決めて、チームにいい流れを作れるようにしたいですね。最近は他国もバトンパスがうまくなっていますし、1・2走に速い選手を起用している。なかなかリードを奪えない状況になっていますが、前半でリードをとれるように意識して走りたい」と意気込んでいた。

 栁田大輝(東洋大)は5位入賞を果たしたブダペスト世界陸上でも2走を担当。1走の坂井からバトンをつないで好走している。日本選手権の100mは3位に終わり、パリ五輪は個人種目を逃したが、その悔しさをリレーで晴らすつもりだ。

「日本選手権は何だったのかというぐらい走れています」と調子は上々。今回も2走での出場が濃厚で、「僕が体調を崩したら、リレー合宿の意味がなくなってしまうので、そこには気をつけつつ、自信を持って2走の準備をしていきたいですね。去年のブダペスト世界陸上のラップタイムが9秒03だったので、パリでは8秒台のタイムを2本揃えたいと思っています。先頭でバトンを渡せるような展開に持っていけるように僕のところでも勢いをつけたいです」と語っていた。

 今回が3回目の五輪となる桐生祥秀(日本生命)は、「まだまだ全開ではないと思うので、調子を上げていって、しっかりメンバーに選ばれるようにしたいと思います」と話すと、「僕はリレーに集中できる。3走で準備しているので、やることはしっかりできるかなと思います。もう一度メダルを取りにいきたい」と燃えている。

 金メダルが期待された東京五輪はバトンミスに泣き、3走を担当した桐生のところまでバトンは届かなかった。

 東京五輪でリレーを組んだ4人のなかで、パリ五輪代表に選出されたのは桐生ひとり。長年、日本の4継を支えてきた28歳が〝仲間〟からのバトンを次の世代につないで、最高の結果を目指す。

 男子4×100mリレー予選は日本時間の8月8日18時35分、同決勝は8月10日の2時45分。サムライたちの勇姿を見逃すな。