空海が筆を入れたという《両界曼荼羅》
続いて、国宝《両界曼荼羅(高尾曼荼羅)》。曼荼羅とは文筆で表すのが難しい密教の宇宙世界を、図や絵を使ってわかりやすく開き示したもの。真言密教では「胎蔵界」と「金剛界」のふたつの世界が重視されており、《両界曼荼羅》ではそれぞれの世界を1幅ずつ、合計2幅で絵画化している。この《両界曼荼羅》は空海が唐から持ち帰った曼荼羅を元に制作したもの。現存最古の両界曼荼羅となり、空海が筆を入れたとも伝えられている。サイズは1幅が約4メートル×4メートル。その大きさにも圧倒される。
空海の書も見逃せない。「弘法にも筆の誤り」ということわざがある通り、空海(弘法大師)は古くから書の名人としても知られている。国宝《灌頂暦名》は、空海が高雄山寺で行った結縁灌頂の受法者を記した名簿。手控え用に書かれたと思われるが、書風は堂々として貫禄たっぷり。中国の二大書聖、王義之や顔真卿から学んだ様子がうかがえる。
こうした空海ゆかりの品々に加え、神護寺ならではの宝物も。最も有名なのは《伝源頼朝像》だろう。教科書でもおなじみの、「頼朝といえばこれ」といえるあの肖像画だ。等身大で描かれており、予想以上にサイズが大きいことに驚かされる。
《伝源頼朝像》の隣には《伝平重盛像》《伝藤原光能像》も公開され、通称“神護寺三像”が揃い踏み。空海ゆかりの品々に目が行きがちだが、こちらもお見逃しなく。