寺外初公開となる本尊《薬師如来立像》

国宝 薬師如来立像 平安時代・8~9 世紀 京都・神護寺蔵

 この神護寺の創建1200年と、空海の生誕1250年を記念して企画された「神護寺 空海と真言密教のはじまり」展。とにかく、出品作が豪華。神護寺に受け継がれる貴重な文化財、とくに空海ゆかりの宝物が見逃せない。

 まずは神護寺の本尊である国宝《薬師如来立像》。平安時代・8~9世紀の作で、空海が神護寺の前身寺院である高雄山寺もしくは神願寺に祀られていたものを本尊として迎えたという。厳しい眼差し、引き締まった頬、強い意志を感じる“へ”の字形の唇。威厳に満ちた表情と重厚な衣の表現などから、日本彫刻史上の最高傑作と言われることも多い。

 この《薬師如来立像》、今回が寺外初公開になる。「そんな貴重なご本尊を展覧会に貸し出して大丈夫なのか」と思うが、傷んだ台座を修理しなければならないこともあり、その機会に広く見てもらえることを期待して寺外公開に踏み切ったそうだ。通常、神護寺では金堂(本堂)に安置されており、拝観時間内ならいつでも見ることが可能。ただし、須弥壇の高い位置にあるため、見上げるような形になる。本展のように、至近距離からほぼ真正面に見られる機会は二度とないかもしれない。

国宝 五大虚空蔵菩薩坐像 平安時代・9 世紀 京都・神護寺蔵

 仏像ファンには《五大虚空蔵菩薩坐像》もたまらない。空海の構想を弟子の真済が実現させたもの。5体が揃う現存最古の作例といわれている。《薬師如来立像》とは異なり、柔らかな表情が印象的だ。